当たり前の表現が「通用しないおもしろさ」

── 90分間も!本当に興味がないと、簡単にはできませんね。河本さんにとって、手話のどんなところが魅力ですか?

 

河本さん:
「新しい言語」になる可能性を秘めているところですかね。

 

言葉や音がなくても相手に伝えられるから、聴覚障がいのある方ともコミュニケーションがとれるし、笑わせることだってできます。

 

表現一つひとつも新鮮でおもしろい。ジェスチャーゲームの応用編という気持ちで僕は始めたし、芸人さんってやっぱり身振り手振りで表現することって得意ですから。

 

あとは、これまで自分が当たり前にしていた表現が「通用しないおもしろさ」もあります。

 

── 「通用しないおもしろさ」とは?

 

河本さん:
自分がこれまで健常者同士のなれ合いで喋っていたことがよくわかったというか。

 

これは厳密には手話ではないのですが、「障がい」をテーマにしたイベントで、健常者と障がい者が入り混じり、コミュニケーションをとるゲームをすることになったときのことです。

 

もう、とにかく伝わらないんですよ。

 

見えない、聞こえない、話せない状況の方に、自分が“いま野球をやっている”姿をどうやって伝えると思いますか?

 

── ボールを投げたり、バットを振るしぐさをする、とかでしょうか。

 

河本さん:
それだけでは見えない人には伝わらないんです。だから、彼らの手を実際に持ってスイングをすると、野球だとわかってくれました。

 

じゃあ、焼き鳥を食べるのは?同じく相手の手を取り、串を持って焼き鳥を食べてるような仕草をしたり、手で口元にくちばしを作ったり羽ばたいて鳥を表現する。