手話で気づかされた「丁寧に表現すること」の大切さ

── 答えを聞けばイメージできそうなのに、思いつきませんでした。

 

河本さん:
そうなんです。でも、障がいのある方々は、軽々とすぐにクリアしてしまう。

 

彼らは、普段から伝えるための表現が丁寧なんだと気づきました。

 

たとえば、「あれ取って」という言葉。見えている人間からすれば、それが醤油っていうのは指をさせばわかります。

 

でも見えない人には「あれ」じゃなく「醤油」と言わないと伝わらない。

 

小さな頃から当たり前のように見えていた、聞こえていたものが、今後も当たり前に続く感覚で生きていましたが、いざ見えなくなったら…。

 

改めて考えるだけで物の見方が変わる、新鮮な体験でした。

 

── こうした体験は、お笑いのお仕事に活きることもあるのでしょうか?

 

河本さん:
めちゃくちゃ活きますね。お笑いも人に伝える仕事ですから。障がい者とのコミュニケーションも、お笑いも共通することは多いと思います。

 

たとえば、目の見えない人に道案内をする場合、「右、いや、左だやっぱり」なんて言ってたら全然、伝わりませんよね。

 

お笑いでも、モタモタしていたら大事なチャンスを逃して、場の空気を冷ましてしまいます。

 

不要な情報を除いて、簡潔に、正しい内容を表現する。適切な言葉を使えているのか、言葉よりも良い表現があるんじゃないかを振り返り、答えを見つけていきたいですね。

 

芸歴28年目、まだまだ新しい発見だらけです。

 

PROFILE 河本準一さん

1975年、岡山県出身。1994年に井上聡さんと次長課長を結成。お笑い芸人として活躍する一方、介護施設や児童養護施設への訪問、米づくりから多くの人を笑顔にする「準米プロジェクト」、手話の普及や講演など、多くの社会活動も行っている。次長・課長も出演する日本最大級のお笑いフェス『LIVE STAND 22-23』が8月19日から開催。

取材・文/大浦綾子 画像提供/吉本興業