「誰もが老いる」すべて自分ごととして考える
── 現在は、施設訪問ではない形での支援活動も始められたそうですね。
河本さん:
実際に訪問をしていくうちに、いろいろな課題が見えてきました。
いちばんは、とにかく現場の人手がたりていないこと。介護職員さんが休む間もなく動き回っていたのに衝撃を受けました。
なんとか負担を減らせないかと、介護施設の入居者向けの食事用エプロンをつくるクラウドファンディングを立ち上げて、定期的に支援を募ることにしました。
入居者のおじいちゃんおばあちゃんのなかには、食べ物をうまく口に運べなかったり、口からこぼしてしまったり、服を汚してしまう方も多いです。
そのたびに職員さんが服を脱がして着替えさせるのはかなりの労力です。
そこで、服が汚れない大きなエプロンを作ってはどうかと。エプロンには撥水加工をかけてあり、軽く拭き取るだけでサッと汚れが取れるので、繰り返し使えます。
── デニム素材でオシャレですよね。介護用には見えない印象です。
河本さん:
いかにも介護用というデザインにはしたくなかったんです。
介護施設に入っているなら、最低限の生活ができればいいでしょ、っていう考えがすごく嫌で。やはり入居者の方々も、おしゃれはしたいはずなんですよ。
── メイクやネイルに興味のあるお年寄りの方もたくさんいらっしゃるでしょうね。
河本さん:
介護職員の方もそういう願いを叶えてあげたいけれど、やはり人手不足がネックになっているそうです。
だから、スポンサーに入ってもらう企業を募って、ヘアメイクさんやネイリストさんが訪問するサービスも実現したいと考えています。
人手不足といえば、買い物の問題もあります。
入居者の何十人分の買い物を介護士の方が行っているケースもあるようで、でもそれって本来の仕事ではないんですよ。そこまでしていたら、施設が手薄になって大変なことになってしまう。
たとえば、大きなタッチパネルで買い物できる機器を共有スペースに置いて、届くようなシステムにできればいいと思う。
そういうのはやっぱり全部、企業の方の投資も必要なんですよね。
── どんどんアイデアが湧いてきますね。
河本さん:
そもそも僕らが年を取っていくとそこに向かっていってるわけですから。他人ごとではなく、目を向けていかないともう大変なことになると思うんです。
── アイデアは河本さんご自身が出していらっしゃるんですか?テレビを通じて見る河本さんはメインの方を支える、サブ的な役割が得意なイメージがありました。
河本さん:
そうですね。こればっかりは誰にも任せられないので、自分で旗を振ってやっていかないと。
見えないところへ向かっていく怖さっていうのはやっぱり誰しもあると思います。
僕も不安や怖さはありますけれど、足が動くうちは自分がリーダーになってやっていきたい気持ちがあります。
もともと芸人だけにとどまらず、俳優や声優、アイドルもやらせてもらっているし、何でもやってみたいんです。
これからも活動の幅をどんどん広げて、前に進み続けていきたいと思っています。
PROFILE 河本準一さん
1975年、岡山県出身。1994年に井上聡さんと次長課長を結成。お笑い芸人として活躍する一方、介護施設や児童養護施設への訪問、米づくりから多くの人を笑顔にする「準米プロジェクト」、手話の普及や講演など、多くの社会活動も行っている。次長・課長も出演する日本最大級のお笑いフェス『LIVE STAND 22-23』が8月19日から開催。
取材・文/大浦綾子 画像提供/吉本興業