「支援の活動に終わりはないんです」。止まないバッシングに言い訳せず、地元の介護施設を回るボランティアを始めて10年が経とうとしている。人知れず続ける行動の先に何があるのか。次長課長・河本準一さんに聞きました。
介護施設で気づかされた笑いの本質
── 施設への訪問活動のきっかけは何だったのでしょうか?
河本さん:
2012年に母親の生活保護の不正受給騒動が起きたことですね。もちろん僕に落ち度はありましたが、事実とは異なることもたくさん言われました。
でも、それをひとつひとつ否定して時間を費やしていては、何も進まないと思って。
すべて受け入れて、新しく誰かのためになる活動を始めようと思ったんです。
そのときに、地元の岡山の皆さんにご迷惑をかけてしまった思いもあり、何らかの形で貢献したいと始めました。
── その貢献が、岡山県内の施設への訪問という形になったんですね。初めて訪問したときはいかがでしたか?
河本さん:
ひとりで介護施設へうかがいました。お笑い芸人ですから、お話をして盛り上げるのを想定していたんですが、いざ行ってみると…全然、笑ってもらえなくて。
施設の入居者には、耳が聞こえづらい方、寝たきりの方、なかには僕がここに来ていることすらわからない方もいる。
そんななか、しゃべるだけで楽しんでもらうのは、かなり難しいと感じました。笑わせようとしても、相手に届かなければ意味がないんだな、と。
── これまでのようなバラエティ番組や劇場でのスタイルとは変える必要があったわけですね。どんな工夫をされたのでしょう?
河本さん:
言葉の数を減らしたり、話すスピードを落としたりしました。
あとは音楽ですね。話しているときはポカンとされている方でも、楽器や歌だとリズムに合わせて体を揺らしたり、手拍子をしてくれるんです。
美空ひばりさんの曲など、年配の方でも親しみがある歌謡曲を歌ってみたりしました。涙を流される方もいてくれて。
もともとはひとりで施設を回っていたのですが、掛け合いがあったほうが盛り上がると思い、一緒に訪問してくれる後輩芸人を募りました。
ボランティアだからギャラは出せないけれど、交通費や経費は僕がもつから、と。
── どんな芸人さんが参加されたのでしょうか?
河本さん:
レギュラー、とろサーモン村田、NON STYLE井上など、僕が騒動でつらい時期にも気にかけてくれた後輩たちですね。
頼んだら快く“やります”と言ってくれて、本当にありがたかったです。