織田信長や紫式部、ベートーヴェンがおにぎりに──。「おにぎり劇場」さんが制作し、SNSに投稿するおにぎりアートに注目が集まっています。歴史上の人物から可愛らしい動物、人気のキャラクターまで、ご飯と海苔と具材で表現する唯一無二のアート作品。これまでの「おにぎり」の固定概念をくつがえす、ユニークでリアルなおにぎりアートはどのようにして生まれるのでしょうか。
おにぎり劇場さんに、誕生秘話やイチオシのおにぎりアート、製作時の裏エピソードなどを教えてもらいました。
初めて握った「麗子像」は息子からディスられる
織田信長や清少納言など歴史上の人物のみならず、トイプードルやひょっとこ、はたまた蚊取り線香やあんバタートースト…。思わず目が釘づけになってしまう、かわいらしい作品たちはすべて炊いたお米から作られています。
おにぎり劇場のアカウントを運営しているのは、三重県在住の女性です。美術系大学の出身で、2019年にあったおにぎりコンテストに岸田劉生が描いた「麗子像」を出品し、おにぎりアートに目覚めたそう。しかし、コンテストでは落選し、高校生の息子さんから「絵と似ていない」「頭だけではあかんやろ」と酷評され、独学で腕を磨くようになったのだとか。
「SNSでも『怖い』『身体も作ってあげて』などのコメントを多くいただいたので、身体の一部でも安定した形で作れないかと考えました。試行錯誤のすえ、三角形をベースにした上半身の人物を制作することができ、そこから人物だけでなく、動物やキャラクターなどレベルアップにつながっていきました」
そうして最初にできたのが「織田信長」のおにぎり。有名な肖像画をモデルに、羽織は大葉とカニカマで表現し、ひげや羽織の桐紋まで海苔と米粒を使って細かく再現されています。
息子さんに酷評された麗子像もおよそ1年半後にリベンジすると、見違えるほどの出来栄えに…!表情もよりリアルになり、カニカマやおぼろ昆布をあしらった着物も素敵です。
「最近は息子からのダメ出しはほとんどないかもしれません。Z世代の率直な意見はとても大事だと思っていて、何を作ったかを伝えずパッと実物のおにぎりを見せて、その瞬間の第一声や表情から作品の良し悪しを読み取っています。
息子の反応が大きい作品はSNSでの反響も大きいので、見る目があると思いますし、よき理解者としてとても頼りになる存在です」