最初は広告の裏に描いていた

しかし、当時は絵を描くことを仕事にするとはまだ夢にも思っていなかったとか。

 

「長女が赤ちゃんの頃は、とにかく手がかかるほうで、気軽に友達と遊びに行ったり、外出することが難しかったんです。

 

必然的に家にこもりがちだったので、娘が寝ている時間などに、「今日の怒った娘の顔はこんなだったな〜」などと思い返しながら似顔絵を描いたりしていて…。

 

はじめは広告の裏などに描いていたのですが、紙で残しておくとかさばるので、写真に撮って残すようになりました。それだけだとスマホの画像フォルダのなかに埋もれていってしまうので、あとで見返しやすくするために、Instagramで専用のアカウントを作って残すようにしたんです」

 

前職は美容部員として化粧品会社で働いていた芸子さん。趣味で絵を描くことはあっても、漫画はまったくの未経験で、描き方なども自己流で学んでいったそう。

 

「今では専用のipadにタッチペンで描いていますが、この漫画はまだタブレットに手描きでした。

 

見返すと、今とは絵のタッチが全然違っていて恥ずかしいですね。でも、懐かしい…。やっぱり絵で残しておくのっていいなと改めて思いますね」

厳しいコメントがつくときは

元々は子どもたちの成長を残しておくためにはじめた漫画ですが、フォロワーが増えるにつれて、読者に楽しんでもらうことを意識して描くようになっていったそうです。

 

「子育てを頑張っている同じ境遇のフォロワーさんが多いので、自分の漫画を通して少しでも励みになったり、息抜きに読んで笑ってもらえたらうれしいですね。

 

美容部員だった経験と育児体験からスキンケアブランドの開発・販売もするようになりました。

 

なかには厳しいコメントをいただくこともあるのですが、意外と的を得ていてその通りだなと思う意見も多かったりして…。一瞬だけ『しゅん…』と落ち込みますが、厳しい意見こそ素直に受け取って、次に活かしていけたらいいなと思っています」

 

漫画家として実業家として活躍の場をどんどん広げている芸子さん。彼女が前進し続ける秘訣は、読者への誠実さと素直さにあるようです。

 

PROFILE 芸子さん

元美容部員で二児の母。保育園全滅で社会復帰を断念した体験を「社会復帰どーすんの?!」という漫画にして話題に。CHANTO WEBで自身の祖母の生き方を綴る「鈴が鳴る」を連載中。漫画の他に、多忙な女性のためのスキンケアブランド「BUSY」を立ち上げるなど、精力的に活動している。

取材・文/上野真依 イラスト提供/芸子