わが子が病気やケガで長期の療養を余儀なくされたら──。どんなに健康な子どもでも可能性はゼロではありません。

 

子どもが長期療養する際に抱える困難のひとつが、学校に通えず学習が途切れてしまうこと。

 

子どもの学びを支える「病弱教育」について、東京都立墨東特別支援学校の校長・庄司伸哉さんに伺います。そこには「病弱教育」が知られておらず、希望する子どもに届いていないという厳しい現状がありました。

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病弱教育はマイノリティ

── お話を伺うまで、病弱教育という仕組みがあることを知りませんでした。

 

庄司さん:
そうだと思います。全国の特別支援学校は2021年度で1160校ありますが、そのうち病弱教育を行うのはたった88校。全体の7.6%というマイノリティで、児童生徒数は2022年5月時点で2958人しかいません。

 

病弱教育は、マイノリティ中のマイノリティなんです。実際に、入院している子どもに「病院の中でも勉強できるって知ってた?」と聞くと、ほとんどの子が「知らなかった」と答えますね。

 

── そもそも、病弱教育は子どもにとって必要なんでしょうか。勉強ではなく治療に専念したほうがいいのではという気もします。

 

庄司さん:
そう考える人は少なくないですね。ですが、病弱教育は長期療養している子どもの心の支えになりうるもの。

 

病弱教育を受ける子どもが入院・療養する理由はさまざまですが、がんや白血病など、重い病気で入院している子どもが少なくありません。彼らは自分の病名を知っていて、毎日死の恐怖や将来の不安と闘っています。

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ところが、授業を受けて勉強に集中する時間を持つと、不安が紛れ気持ちを切り替えることができる。「早く治したい」「退院してまた学校に通いたい」「受験を頑張りたい」という前向きな気持ちも引き出されます。

 

人は、何もしていないと心配事や不安がどんどん募っていくものですよね。病弱教育は彼らの将来の希望に直結するものだと思っています。