単なるロボットではなく「分身」
── オンラインで前籍校の授業を受けるのと、違いはありますか。
庄司さん:
OriHimeは子どもにとって分身のような存在です。
やはり一方的に流される授業を試聴するのと、OriHimeを介して交流するのでは、コミュニケーションのあり方が全く違うと感じています。
ある中学校の先生は、授業中にOriHimeを指名したり、学年が上がるときに手書きの修了証書をOriHimeに渡したりと、OriHimeを子ども自身のように扱ってくれていました。
そうすることで、子どもは前籍校に参加している手応えを得られます。クラスメイトたちも、子どもの存在を感じることができますよね。
── ただ、復学の際には、OriHimeではなく子ども自身が教室に行くことになりますよね。かえって抵抗はないのでしょうか。
庄司さん:
薬の影響で容姿が変わることもあるので、やはり「友達にどう思われるか」と不安になる子どもは少なくありません。当然、前もってクラスメイトに現状を理解してもらう必要があります。
そんなときにOriHimeが活躍したケースもありました。
あるお母さんが、OriHimeが学校にいるときに足を運び、クラスメイトに向けてわが子の現状を伝える手紙を読んだんです。
子どもは友達がお母さんから直接話を聞いて納得している様子をOriHime越しに見られるし、親の愛情を感じることができる。結果、安心して復学することができました。
療養中に必要なのは前向きな気持ちと安心
── OriHimeの存在が、子どもたちの安心につながっているんですね。
庄司さん:
OriHimeの存在は、病弱教育を前進させてくれたと思います。ですが、まだまだ途上。
病弱教育は、単なる学習支援にとどまらず、闘病で落ち込みがちな子どもの気持ちを前向きにするものです。
療養を余儀なくされた子どもが、前向きな気持ちで過ごし、安心して復学できることを願っています。
PROFILE 庄司伸哉さん
東京都立墨東特別支援学校 校長。都立養護学校教諭、副校長、教職員研修センター統括指導主事、都立特別支援学校校長、学校経営支援担当課長等を経て、2021年4月より現職。
取材・文/小晴