入院中の病院から、授業に参加しクラスメイトと交流する。

 

身体的・精神的理由などで、さまざまなことを諦めざるを得なかった人たちのために開発された「分身ロボット OriHime(オリヒメ)」の活用が広がっています。

 

OriHimeを復学支援に取り入れている、東京都立墨東特別支援学校の校長・庄司伸哉さんに話を聞きました。

復学支援に活用されている墨東特別支援学校のOriHime

病弱教育に欠かせない復学支援

── OriHimeを活用されていると聞きました。

 

庄司さん:
病弱教育を受けた子どもが、前籍校(子どもが元いた学校)に戻る際に活用しています。

 

病弱教育とは、病気やケガで入院・治療が必要となったり、継続して医療を必要とする子どもを対象とした教育のこと。入院中だけ本校に籍を移すことで、受けられる教育です。

 

病弱教育を受ける子どもは、療養を終えれば前籍校(子どもが元いた学校)に戻ります。前籍校に戻るための復学支援は、病弱教育の最終段階。OriHimeが活躍するのはそのときです。

 

── 復学支援とは具体的にどういったことをするのですか。

 

庄司さん:
復学支援は、子どもの心理的ハードルを下げるためのもの。

 

手紙のやり取りや工作などの作品を通して子どもと前籍校・クラスメイトとのコミュニケーションをはかる方法が一般的です。

 

ただ、それでも子どもは「戻ったとき本当に自分は受け入れてもらえるのだろうか」という強い不安を抱えている。

 

OriHimeは、そうした不安を解消する新しい手立てだと感じています。

身振り手振りを交えた交流が可能に

── 前籍校の教室に、OriHimeを置かせてもらうんですよね。

 

庄司さん:
はい、都合が許せば子どもの席に置かせてもらうこともあります。

 

OriHimeにはカメラとマイクが内蔵されていて、身振り手振りを交えて目の前の人とコミュニケーションがとれるんです。OriHimeがあれば、病院にいながら授業に参加し、クラスメイトと会話ができます。

 

相手からこちら側が見えないのもポイントです。療養により見た目が変化する子どももいますが、そうしたことを気にせずに交流することができます。

 

なかには、早い時期からOriHimeでクラスメイトと定期的にコミュニケーションをとっているケースもあり、よりスムーズに復学できる子どもが多いと実感しています。

OriHimeに向かって話す庄司さん

── OriHimeの活用はどなたの発案ですか。導入費用や利用者の費用負担はどうなっているのでしょう。

 

庄司さん:
2016年にスタートした、ベネッセこども基金による「院内学級プロジェクト」がきっかけです。病弱教育を担う都立の特別支援学校5校で、OriHimeを活用し、入院中の制約を乗り越える学習を実現しました。

 

この試みが評価され、2021年度からは東京都の予算がつくようになりました。現在、本校には3台のOriHimeが配置されています。利用者の費用負担はありません。