故郷や旅先など地域に恩返ししたい人が増えている

南田さんの目は、地域のファンや関係コミュニティを育てることにも注がれています。

 

「長く都市部で働きながら自分の故郷のために何かしたいと応募する方は多いです。特に東日本大震災以降、地方との交流に目を向ける潮流がうまれました。

 

一方、たまたま訪れた特定の地域への想いが発端となって、ふるさと兼業を始める方もいます。

 

旅行で訪れたことから、『お世話になった青森にお返しをしたい』と、山奥の温泉旅館の現場サポートや広報戦略立案を手伝う方もいました。

 

都市部で生まれ育ったので、自分には故郷と呼べる場所がない。そこで『ふるさとが欲しい』と参加される例も。

 

兼業後、『ただいま』と言える場所ができて嬉しいという声もききます。ふるさと兼業を機に移住した例はまだありませんが、ふるさと兼業を通じて企業や地域の”ファン”は間違いなく増えています」

 

地方との交流という切り口でみると、外国国籍の方が海外からふるさと兼業に参加する日が来るかもしれません。

 

「私たちの本拠地は岐阜県ですが、たとえば、観光で訪れたドイツ人が岐阜の伝統産業の和傘に出会って感動し、“和傘をヨーロッパでも拡販したい”と言って、帰国後に商品開発や新規顧客開拓案件に加わる、ことだってありえますよね。

 

もちろん、時差・文化・言語など乗り越えなければならない課題はありますが、世界中が共に働く仲間候補であり、お客さんであり、潜在的なファンだとも考えられます」

 

どこにいても働きたい人に、働く機会を。“想い”を大切にして様々な人材と地方を結びつけるふるさと兼業は、今後も様々な垣根を取り払い、人の温もりを感じる働き方を提案してくれるでしょう。

 

PROFILE 南田修司さん

奈良県出身。2009年にNPO法人G-netに加入し、副代表、共同代表を経て2017年より代表理事に就任。2018年、ふるさと兼業を開始。

取材・文/岡本聡子 写真提供/NPO法人G-net 、長良川STORY事務局