厚生労働省の統計によると、副業する人の数はこの10年で2割以上増加。オンライン化が進み、地域を超えての参加もさかんに。移住しなくても、会社を辞めなくても地方の企業に関われる「ふるさと兼業」という副業形態で、本業ではできない経験をする人が増えています。

関東にいながら愛知の企業を副業でサポート

2020年秋、関東在住の2人の女性が地方でのオンライン副業に参加しました。勤務先は、愛知県の杉浦味淋(株)です。

 

杉浦味淋(株)ではみりんをもっと広げたいと、展示会やみりんを使ったレシピ開発を考えましたが、苦戦する日々でした。

 

社内では生まれにくい新しいアイデアを求め、地元の生産者と開発したみりんを使ったグラノーラとドレッシングのマーケティングや、新商品開発に関わる人材を「ふるさと兼業」を通じて募集。応募者12名のうち2名を受け入れました。

 

マーケティング・広報や野菜ソムリエの経験・資格を持つ2人は、新しいレシピの開発からSNSの活用、イベントの開催等に携わり、みりん関連商品の顧客層を広げることに貢献。

 

ふるさと兼業の副業期間は3か月~無期限と幅があります。今回は3か月間の設定でしたが、終了後も2人ともそれぞれ副業として関わり続けています。    

2名の兼業者が開発したレシピ。SNS等でみりんの新しい使い方を発信(写真提供:杉浦味淋株式会社)

このように、全国各地に住む個人と地域中小企業のマッチングを行い、地域を超えた事業参加を後押しするのが「ふるさと兼業」です。

 

この仕組みを立ち上げたのは、岐阜県に本拠地を置くNPO法人G-net。代表理事の南田修司さんによると、ふるさと兼業は他の副業仲介サービスと違い、副業先が抱える課題解決や事業への共感を第一にしています。

 

「『ふるさと兼業』というネーミングは、『ふるさと納税』が寄付で地域を応援するように”スキルや技術、経験”を投資し地域を応援する場にしたいと考えたからです。

 

『ふるさと兼業』は、好きな地域や共感する事業にプロジェクト(副業案件)単位で関わる仕組みです。

 

都会で生活しながら貢献する、会社員などの本業を持ちつつ地方のNPOや中小、ベンチャー企業に関わる働き方の選択肢を増やします。

 

兼業禁止の企業勤めの方でもプロボノ(各分野の専門家が、職業上持っている知識やスキルを無償提供して社会貢献する関わり方)として参画するなど、応募者の仕事スタイルや希望する生活に合わせて、プロジェクトを選ぶことが可能です。

 

スキマ時間活用から週3日間働く方まで、勤務形態はさまざまです」

 

冒頭のプロジェクトは完全オンラインで実施されましたが、現地に赴いて行うプロジェクトもあります。

 

「従来は、オンラインと対面のハイブリッド型でプロジェクトを行っていました。コロナ禍により完全オンラインの案件が増え、海外を含むより多くの地域からの参加が可能になりました。

 

ふるさと兼業は2018年にスタートしました。コロナ禍の2020年度のプロジェクト数は120。それに対して、兼業を希望する応募数は1000件近くにのぼっています」