進化し続ける田舎館村の田んぼアート

── 最初の頃に比べるとどんどん絵柄が複雑になっていますね。

 

鈴木さん:

今でこそ繊細な田んぼアートになっていますが、最初の頃は絵柄の作成は測量せずに、ロープと目視で行っていました。「だいたいの感覚」で測量していたんですね。

初期の頃の作品「モナリザ」(2003年)
初期の頃の作品「モナリザ」(2003年)

今は、下絵を元に、元測量会社勤務の村人に、座標の計算を行なってもらい、それに基づいて測量を開始します。そして、その設計図を元に、苗を植える目印となる杭を打つことで、正確かつ繊細な絵を生み出せるようになりました。

 

── 今にも動き出しそうな躍動感あふれる絵も生まれています。

 

鈴木さん:

アートの下絵は2003年の「モナリザ」のときから一貫して地元の美術の先生にお願いしているのですが、今は手書きではなくコンピューターのソフトウェアを駆使し、遠近法を使って描いてもらっています。

 

通常の絵のままだと、鑑賞する場所である役場の展望台から見たときにゆがんで、比率がおかしくなってしまうんです。遠近法を用いたことにより、立体感も増しました。2009年の「戦国武将とナポレオン」の躍動感はまさにこのお陰です。

躍動感あふれる2009年の作品「戦国武将とナポレオン」
躍動感あふれる2009年の作品「戦国武将とナポレオン」

── アートに使える稲の色も年々増えていますね。

 

鈴木さん:

イネは赤、青、紫を示すアントシアニン系の色素を持っており、研究者の方々の力によって、さまざまなカラフルな稲を生み出すことができるようになりました。生育した今までにない色を丁寧に育ててたねもみを増やすことで新品種の稲が生まれています。

 

初めは、黄色、紫、それに食用の緑の稲の3色だけでした。そこに2008年から白、2010年に赤、2012年にオレンジが加わりました。今は、全7色10品種の稲を使って田んぼアートを制作しています。

 

白の稲が加わったことは革命的な進歩につながりました。自然に出すことのできない色で、これにより陰影がつけられるようになり、下絵を選ぶセレクションの幅もぐっと増えました。例えば2008年の「恵比寿様と大黒様」を描けたのは、白の稲があったからこそです。

白の稲を初めて使った2008年の作品「恵比寿様と大黒様」
白の稲を初めて使った2008年の作品「恵比寿様と大黒様」