自宅出産は「いい経験だった」
── 助産師として学生時代にもさまざまなお産に立ち会ったかと思いますが、ご自身のご出産について教えていただけますか。
敦子さん:
5人とも比較的安産だと思います。子どもそれぞれにいろんなお産を経験しました。破水してしまって促進剤を使ったり、無痛分娩だったり、いちばん下は自宅出産で産みました。
── 自宅出産をされた方にお話を伺うのは初めてです。自宅で産もうと決めた理由はなんですか。
敦子さん:
助産師の勉強で自宅出産は全体の1%だということを知りました。なかなかいらっしゃらないですよね。
いつ出産になるかわからないと思うと、上の子どもたちを預けたり、移動したりするのが大変だと思ったんです。お産が始まって、子どもたちがいながら自分の準備もして病院に向かうことを考えたら、助産師さんに来ていただいたほうがいつお産になっても安心できるかなと思ったんです。
これまでも全員に共通してお産の時間が短くて。双子のときも陣痛から1時間で産まれたのもあって、病院まで間に合うかなというのも心配でした。
取り上げてくださったのは病院に勤務していた助産師さんで、健診も付き添ってくださって一緒に病院で受けて。病院側からも自宅で産んでも大丈夫と言われてから自宅出産を決めました。
── 出産にはお子さんたちも立ち合ったのですか。
敦子さん:
出産が夜だったので、寝ていた子どもたちを起こさなかったんです。助産師さんから「起こしますか」って聞かれたんですけど。今、みんなを起こして夜中に大興奮して、走り回ってワーワー騒がれたら気が散ると思って「そのまま寝かしておいてください」と言いました。
── 冷静な判断ですね。でも子どもたちも朝には赤ちゃんに会えたんですよね。
敦子さん:
「起きたら赤ちゃんがいた!」という感じでした。何がいちばんいいかはわからないのですが、とてもいい経験になりました。実家の両親が手伝いに来てくれたので、子どもたちは学校にも通えて、そのままの生活ができましたし。まさに日常の中に出産があるという感じでした。
今は医療の力を借りてより安全に産むというのがベストかもしれないです。お産は何があるかわからないですし、自宅で医療介入はできません。自宅出産を経験して、今こうして助産師となってみると、自宅出産にはメリットとデメリットがあるので、しっかり周りの医療者の意見を聞きながら考えていただきたいと思います。
子どもたちの未来に願うこと
── お子さん5人はそれぞれにどんな性格ですか。
敦子さん:
全員違いますね。しているスポーツもバラバラで。性格も違うし、私から見たら顔や表情も違うと思います。忘れ物が多い子もいますし、忘れ物を絶対したくない子もいますし、個性もさまざま。あまり私にも似てないかもしれないです。「ママはこうだった」と言っても「ママはママだから」とはっきり言われます。
いちばん下はよく上の子たちを見ているので、「これをするときはこの人に頼もう」とうまく使い分けをしているみたいです。観たい映画があったら、誰かきょうだいの中で誘って行くとか。それぞれにいろんな組み合わせがあるのは、見ていて楽しいです。
5人いると「お兄ちゃん」という名称が使えないんです。お姉ちゃんは1人ですけど、上の子からすると弟もいっぱいいる。なので、うちは名前で呼んでいます。上も下も呼び捨てなので、上下関係なく平等な印象があります。
── 元々、お子さんを何人産みたいという希望があったのですか。
敦子さん:
私自身が4人きょうだいで育ったので、その良さは知っていましたけど、自分がたくさん子どもを産みたいとは思っていなかったですね。でも小さい頃から、赤ちゃんと接する機会は多くありました。
私が小学校6年生のときに下の弟が産まれたので、弟が小さい頃の記憶もあって、学校から帰ったら抱っこやおんぶをして面倒をみていました。
高校生のときにアメリカにホームステイしたのですが、そこの家庭が1歳〜11歳までの6人きょうだいで。ホームステイしながらベビーシッターしていたような感じです。物心ついてから、思春期にかけて周りに赤ちゃんがいる生活をしていましたね。
── 離婚をして子育てをするなかで、何か生活に変化はありましたか。
敦子さん:
あまり変わってないですね。離婚するときに、子どもたちの精神面や友達関係が大丈夫かなと心配しましたけど、何も変わってないかな。
男の子が多いので、将来この子たちが家族を持って父親になるというときへの心配もありましたが、私の弟が今、子どもが産まれて親になったので、それを見て感じ取ってもらえたらいいのかなと思っています。今でもすごく仲が良くて泊まりにも行きますし、父親ってこんな感じなんだというのを身近で感じることができる環境にあります。
── 子育てのモットーはありますか。
敦子さん:
子どもを育てるというよりは、子育てをしている私の姿が楽しそうに見えたらいいなと思います。「子どもが5人いて毎日大変そうだったけど、ママがいちばん楽しんでいたよね」って。
私が自分の人生を自分で選んできたので、それが伝わったらいいなと思うんです。何かを教えなきゃ、伝えなきゃというよりも、私がしっかり自分の人生を歩んでいくことで、人生の楽しみ方というのにいつか気がついたり、思い出したりしてもらえたらというのが子育ての最終的な目標です。
PROFILE 敦子さん
1978年大阪府生まれ。5児の母。大学生からモデルを始め、ビールのキャンペーンガールやJJ、CM出演などを経験。出産後はVERY、からだにいいことなどで表紙モデルを経験し、NGOジョイセフでのタンザニア訪問をきっかけに出産や子育てが楽しみになる社会へ貢献したく助産師を目指す。看護師免許取得、この春に助産師免許を取得し、現在助産師として活動中。
取材・文/内橋明日香 写真提供/敦子