モデルから助産師へ 異業種への挑戦
── 助産師として実際に働いてみていかがですか。
敦子さん:
すごく楽しいです!新生児に囲まれる職場で、毎日癒やされています。それと、私も出産経験がありますが、改めて出産という大仕事を終えたお母さんたちを目の前にすると、本当に尊敬します。「皆さんすごい」と思いながら仕事をしています。
でも、まだ新人助産師なのでうまく伝えられなくて。出産と育児は一括りにされていますけど、正解がないものですし、何がベストかも人によって違う。悩みながら、葛藤しながらの日々です。資格は取ったけれど知識量は全然たりないので、働きながら勉強も続けています。
── モデルから助産師、まったく違う分野への挑戦ですね。
敦子さん:
モデルは多くの方に発信する仕事なのですが、助産師は直接、目の前にいるお母さんが幸せな育児ができるようにと寄り添っていくのでまったく違います。どちらもとても楽しいのですが、すぐに反応が返ってくるので、また別のやりがいを感じます。
── ご自身も5人のお子さんの母親ですが、仕事中に自分の子育てを思い出すことはありますか。
敦子さん:
ありますね。「これはどうしたらいいですか」と聞かれると「私もひとり目のときはこうだったな」と、同じ思いをしていたことを思い出します。長男が生まれたときなので18年前のことですけど、初めての育児のことはすごくよく覚えています。
5人の子育て「反抗期もまだまだ可愛い」
── お子さんは、上は高校3年生、下は小学3年生になったそうですね。
敦子さん:
小さいうちも可愛いのですが、少し大きくなってくると、子どもたちも自分の人生を歩み始めるんです。それを見ると私も別の人生を疑似体験できます。スポーツを頑張っている子の試合を見に行くと、私がこれまで知らなかった世界も見せてもらっているように思いますし。5人いると本当にいろいろな経験ができます。
もちろん、反抗期で大変なときもありますけど、それって「自分ってなんなんだ」って一生懸命、葛藤している姿ですよね。それを横で見るのは成長を感じられて、嬉しい部分でもあります。
疲れているときに私に当たってきたり、偉そうな口を聞いたりすることもあって。感情でぶつけられると感情で返してしまうこともあるのですが、反抗できるって甘えられているってことじゃないですか。どんなことをしても許してもらえるという信頼感があるから、こうしてぶつけられているんだと思うと「まだまだ可愛いな、お子ちゃまだな」と。
── 助産師になることについて、お子さんたちの反応はありましたか。
敦子さん:
基本的に、子どもたちは私がすることを「やめといたほうがいい」とは言わないんです。ママに何言っても聞かないだろうと思っているのかもしれないです(笑)。知人から聞いた話では、子どもに「お母さん、助産師になるために学校に行っていてすごいね」と話したら嬉しそうにしていたというのは聞いたことがあります。
── 子どもたちにはどんな人生を歩んでほしいですか。
敦子さん:
どんな環境でも幸せを見つけられる人生であってほしいと思います。私が思う幸せと、本人が感じる幸せって違うと思うんです。私から見たら「これはつらいんじゃない?」と思うことも、子どもたちが楽しいと思うならばそれでいいと思います。
でも、誰か一人くらい産婦人科医になってくれないかなと。5人のうち1人くらい医師免許を持ってくれたら一緒に働けるので、たまにそんな話もしますね。「誰でもいいからなってくれない?」って。
長男はなりたいものがあるらしく、いち早くそこからは抜けていて。次男もスポーツに専念しているので…。
── でもあと3人いらっしゃいますね!
敦子さん:
誰かがなってくれたらいいなという淡い期待をしつつ。きょうだいが多いのが良かったから、将来自分もきょうだいが多いのがいいなと思ってもらえたらいいですね。でも子どもに関しては彼らの選択肢なので、いちばんはやっぱり本人たちが幸せであってほしいと思っています。
PROFILE 敦子さん
1978年大阪府生まれ。5児の母。大学生からモデルを始め、ビールのキャンペーンガールやJJ、CM出演などを経験。出産後はVERY、からだにいいことなどで表紙モデルを経験し、国際協力NGO ジョイセフでのタンザニア訪問をきっかけに出産や子育てが楽しみになる社会へ貢献したく助産師を目指す。看護師免許取得、この春に助産師免許を取得し、現在助産師として活動中。
取材・文/内橋明日香 写真提供/敦子