バスクチーズケーキが日本に上陸するまで

 

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昨年からブームになっているバスクチーズケーキですが、日本に上陸するまでの道のりは決して平坦なものではありませんでした。バスクチーズケーキの製法を日本に持ち込んだ第一人者は『ガスタ』のシェフパティシエの戸谷尚弘(とだになおひろ)さんです。 20歳の時、都内のレストランでパティシエとしてのキャリアをスタートした戸谷さん。スイーツの本場フランスで学びたいという思いから、34歳の頃に思いたち、カバンひとつ、単身でフランスに渡ったそうです。渡仏後は、語学学校でフランス語を学びながら、パンとスイーツを販売する小さなお店で働いていました。 そんな戸谷さんが、パリで働く中で「これは美味しい」と感動したスイーツが2つあったのだそうです。そのひとつがバスク地方で17世紀に誕生したといわれている伝統的焼き菓子「ガトーバスク」。もうひとつが「バスクチーズケーキ」でした。

 

ガトーバスクが看板スイーツのメゾンダーニ

フランス側のバスク地方、ビアリッツのスイーツの名店『ミルモン』の人気スイーツはガトーバスクです。戸谷さんは「いつかこのお店で働きたい」という思いが膨らみ、パリを離れ『ミルモン』の門を叩き、修行を始めました。そして『ミルモン』のトップシェフパティシエに「あなたは美味しいものを共有する親友だ」と認められるようにまでになったそうです。 その結果、2015年にガトーバスクが看板スイーツの『メゾン・ダーニ』が誕生しました。しかし、戸谷さんにはもうひとつ、どうしても叶えたいことがありました。それが「バスクチーズケーキ」の美味しさを日本の人たちに知ってもらうことだったのです。

 

シェフの熱意が通じて製法を伝授してもらえた

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そこで『メゾン・ダーニ』がオープンしてから2年ほど経った頃、スペイン側のバスク地方、サンセバスチャンにあるバル『ラ・ヴィーニャ』に修行させて欲しいと、メールや電話をしたり、実際にバルを訪れるなどして、アプローチを開始しました。 しかし、良い返事はもらえませんでした。いまや『ラ・ヴィーニャ』は世界中の美食家たちが足を運ぶ名店バルです。当然、世界中からチーズケーキの製法を教えて欲しいという問い合わせが後を絶ちません。ですが、全てお断りしていたとのこと。 ここで心が折れて、諦めてしまうのが普通かもしれませんが、戸谷さんは決して諦めませんでした。 再び現地に飛び、チーズケーキを食べながら、カウンターから厨房を覗きながら学ぶだけでもいいと店を訪れたところ「そんなところにいないで、厨房に入りなよ」という予想外の対応をして下さったのだとか。戸谷さんはスペイン滞在中に、バスクチーズケーキの製法を習得することに成功したのです。