違和感を解消するには起業しかなかった

── 起業したきっかけを教えてください。

 

松本さん:

もともとは大手住宅メーカーに勤めていたのですが、簡単に言うと、自分の生き方や働き方にモヤモヤしていたことがきっかけで起業しました。モヤモヤや違和感はひとつだけじゃなく、当時さまざまなシーンで感じていました。

 

── どのようなシーンで違和感を覚えていたのでしょうか。

 

松本さん:

たとえば、会社員時代は地方に出張する機会がとても多かったんです。でも、どの地方に行っても中心部は大手のチェーン店が軒を連ねていて、すべて同じような景色に見えました。地方の魅力が失われているように感じたこともモヤモヤの一つです。

 

また、社内においても、育休前はバリバリ頑張っていた女性の先輩が、育休明けに責任が少ない仕事に回されて気力を失っていたり、役職定年した上司が張り合いを失っている姿を見てモヤモヤしていました。

 

もっと遡ると、私が小さい頃は母が福祉施設でボランティアをしていて、障がいのある方々が周りにいるということが当たり前の環境で育ったんです。だけど、普通に進学や就職をするにつれて、自分の周りにそういう人たちを見かけなくなっていることに気づきました。

 

地方においても会社においても、社会の仕組みが「すべてにおいて大規模で効率的に経済を回していこう」と動いているように見えたんです。効率や生産性はもちろん大事だと思いますが、その仕組みがあまりに一般的になっていて、そこに温度や多様性を感じることができなくなっていきました。

 

そう感じてしまったら、その仕組みの中でお金を稼ぎ生活している自分の生き方、働き方に対するモヤモヤが大きくなり、それを解消するには「起業しかない」と思い起業しました。

ほぼ無知の状態から切ったスタート

── そのモヤモヤから、入浴料などのセルフケア商品で起業しようと思ったのはなぜですか?

 

松本さん:

正直なところ、起業前は「これをすごくやりたい!」というものはありませんでした。ただ「自分のモヤモヤを解消するには起業しかない。じゃあ、何だったら私にできるだろう?」という順番でいろいろ探しました。なので、ハーブについても最初はほぼ無知で(笑)。

松本さん

 

── そこから、どのようにこの事業に辿り着いたのですか?

 

松本さん:

会社員時代、肩こりや頭痛、冷え性にすごく悩まされていたんです。整体に行ったりジムに行ったり、食事療法も試したりしていました。

 

でも「やっぱりお風呂がいちばん大事だよ」という話をさまざまな場所で聞き、当時お風呂は「日々のタスクの一つ」という感じで重視していなかったんですが、「せっかくなら楽しめる工夫をしよう」と思い、入浴料に辿り着きました。

 

そんなときに奈良市内にある実家に帰り、大和当帰(やまととうき)というハーブに出会いました。ただ乾燥させただけのハーブをお風呂に入れてみたところ、体の芯からポカポカと温まっていくのを感じて。

 

「こんなに温まるんや!面白い!」と思って調べていくと、地方にはハーブを生活に活かす文化が沢山あることを知りました。

 

地方にあるその小さな魅力が、当時モヤモヤを感じていた「社会の大きな仕組み」と対極にあるように感じて「この地方の魅力である自然植物を活用した入浴料を使って、大きな仕組みの中ではできない、関わる人ひとりひとりを幸せにする仕事がしたい」と思ってこの事業を始めました。

 

そこから、お風呂の時間に対する考え方も変わったんです。

大和当帰

── ハーブとの出会いで、タスクの一つでしかなかったお風呂に対する概念も変わったということでしょうか。

 

松本さん:

そうですね。お風呂は入ったら気持ちいいけれど、帰宅時間も遅いのにそこから沸かすのに時間がかかるし、ご飯も食べなきゃいけないし、早く寝たいけどシャワーで済ませたら体が冷えるし、入ったら髪を乾かさなきゃいけないし…と、いつのまにかタスクになっていました。

 

でも、ハーブのお風呂に入ると五感が研ぎ澄まされる感覚があったんです。華やかな香料も使われていないのにハーブの優しい香りに気づいたりして、「人の嗅覚って、こんなにシンプルなことに十分に気づくことができるんだ」と。

 

嗅覚だけじゃなく、余分に与えてくるものがないシンプルなハーブが、シンプルなことに気づかせてくれるというか。

 

それまでは、情報が多すぎてあまり自分と向き合うことをしていませんでしたが、あえて引き算をして取り払って、シンプルなものに囲まれた時に「自分が何を感じているか」が分かるようになりました。

 

お風呂に入る時間が、体を温めるだけじゃなくて自分と向き合う時間だと気づいてからは、今までとまったく違う時間になりましたね。

 

── なるほど。最初はお風呂にもハーブにも興味がなかったのに、どんどん変わっていくストーリーが面白いですね。「好きなことを仕事にする」という起業に対するイメージがまた変わりました。

 

松本さん:

モヤモヤを抱えてからは起業のネタ探しをしていたことが大きかったですね。地方の魅力が失われつつあると思っていたので、ローカルの魅力は常に探していました。

 

「そもそも自分の地元の奈良には何があるんだろう」と道の駅に行ったり、地域イベントに顔を出したり。

 

今思えば、肩こりや冷え性など、当時自分が感じていた不調から「添加物が入っていない体に優しいものを取り入れよう」と少しずつ学び始めていた時期なので、ハーブにもピンときたのかもしれません。

 

あとから考えると色々繋がっているのかなぁと。