日本うつ病学会によると、近年、うつ病を含む気分障害の患者数が、すべてのライフステージにわたって増加しているようです。
特に就業世代については、長引く不況や経済状況の悪化、失業率の上昇などを背景に増加傾向があるとのこと。
その打開策のひとつとして今、奈良県下北山村にある宿泊型転地療養サービス「ムラカラ」が注目されています。
大自然に恵まれた下北山村全体が活動のフィールドとなっている「ムラカラ」で、うつ病などのメンタル疾患を経て再スタートする人が増えている理由について、株式会社リヴァ(LIVA)の社員で「ムラカラ」リーダーの森田沙耶(もりた・さや)さんにお話を伺いました。
うつ病からの再出発に新たな選択肢「ムラカラ」
── ムラカラについて簡単に教えてください。
森田さん:
はい。「ムラカラ」は、うつ病などで休職・離職している方に対して、宿泊型転地療養サービスという、住み慣れた土地を離れ、全く異なる環境に身をおいて疾病の再発予防や今後の人生を考えるためのサービスを提供しています。
奈良県にある自然豊かな下北山村に滞在してメンタルケアのプロと一緒に病気や自分に向き合い、復職や転職など、より自分らしい人生へ踏み出すための取り組みを行っています。
利用者の定員10名に対し、常勤スタッフ4名と非常勤スタッフ数名で対応しています。
── 今おかれている環境から一度離れることのメリットにはどういうものがあるのでしょうか?
森田さん:
休職や離職されている方の中には、ご家族や近しい周囲の人との関わりの中で、自分のケアがあと回しになっている方がたくさんいます。
たとえば、「家族や知人から気をつかわれすぎて居心地が悪い」「家族や近所の人、自分の周りの人からどう思われているか考えると気が休まらない」「家にいるんだから、何かしらやらなきゃと無理をしてしまう」などといった声をよくいただきます。
休んでいても、ご家族や近しい人との関わりなどによってかえってストレスが生じてしまっている場合、自分の心と体の健康を整えることは難しくなってしまいます。
そういった時に、今ある生活環境から物理的に距離をおき離れることで、落ち着いて自分を見つめ直して心と体を回復させ、復職の準備に取り組めるというメリットが生まれます。
また、環境を変えることで、自分がおかれている状態などを俯瞰して捉えられるようにもなります。