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前回、現代に増えつづけている「うつ病」の打開策として紹介した、奈良県下北山村にある宿泊型転地療養サービス「ムラカラ」。人口800人の村に開所したムラカラには、地方創生のヒントが詰まっていました。ムラカラの母体である株式会社リヴァ(LIVA)の社員で「ムラカラ」リーダーの森田沙耶(もりた・さや)さんと、下北山村役場地域振興課課長の和田英樹(わだ・ひでき)さんにお話を伺いました。

一般的には不便な場所だからこそ「ここで開所したい」と思った

── あらためて、ムラカラについて簡単に教えてください。

 

森田さん:

はい。「ムラカラ」は、うつ病などで休職・離職している方に対して、宿泊型転地療養サービスという、住み慣れた土地を離れ、全く異なる環境に身をおいて疾病の再発予防や今後の人生を考えるためのサービスを提供しています。

 

奈良県にある自然豊かな下北山村に滞在して、メンタルケアのプロと一緒に病気や自分に向き合い、復職や転職など、より自分らしい人生へ踏み出すための取り組みを行っています。

 

利用者の定員10名に対し、常勤スタッフ4名と非常勤スタッフ数名で対応しています。

下北山村の大自然

── 本社は東京にあると伺いましたが、奈良県下北山村を「うつ」療養のフィールドに選ばれた背景について教えてください。

 

森田さん:

きっかけは、奈良県の下北山村とソトコトが主催した関係人口育成講座「奈良・下北山むらコトアカデミー」に私が個人的に参加したことでした。下北山村に実際に足を運んだとき、その自然の美しさに心惹かれました。私は東京で生まれ育ったのですが、下北山村の何もかもが今までの日常とは違ったんです。

 

下北山村は、奈良の中心部から車で約3時間の奥地にある人口約800人の大自然に囲まれた村です。電車も通っていなければ、夜遅くまで開いているお店はなく、夜は真っ暗で星がきれいで。昼夜問わず様々な動物が出没します(笑)。

上から見た下北山村

そんな、一般的には不便と言われるような場所だからこそ、「ここだ」と思いました。

 

というのも、ムラカラの母体である「株式会社リヴァ(LIVA)」は、「自分らしく生きるためのインフラをつくる」をビジョンとし、うつ病の方への再発予防訓練、職場復帰・再就職支援などを行っています。

 

私自身、都市部でリヴァの利用者を支援する中で「利用者が環境を大きく変えて、自分を見つめ直す機会があればいいな」と思っていました。また、環境を変えるには、落ち着いて生活リズムを整えられる場所がいいと思っていました

下北山村の風景

なので、リヴァの利用者の短期宿泊プログラムを下北山村で開催したいと思い提案したところ、奈良県の方、下北山村の方、リヴァの代表も興味を持ってくれて、どんどん話が進みました。その後、奈良県、下北山村、リヴァで三者協定を結び、連携して事業が動いていきました。