バーチャルとリアルの壁をぶち破る物語を描く映画『ALIVEHOON アライブフーン』(公開中)で、トップレーサー・柴崎快を演じている福山翔大さん。福山さんはこれまでにどのような壁にぶち当たってきたのでしょうか?

今でも夢にでてくる中学生時代のライバル

── 乗り越えるのが難しい壁にぶち当たった経験はありますか?

 

福山さん:

剣道をやっている時に、ずっと勝てない人がいました。

 

中学2年生の時に、ようやく1回だけ勝つことができて、戦歴は7戦6敗1勝に。1度でも勝てたのは相当うれしい出来事だったようで、今でも夢に出てくることがあります。

 

結局勝ったのは1回だけで、3年生最後の試合は、負けで締めくくりました。負けで終わったけれど、僕はずっと笑顔でした。

 

心から気持ちよいと思ったし、そこに向かって頑張った自分も誇らしかったし、切磋琢磨できる相手がいたことに、心から感謝しています。

 

今も目の前は壁だらけです。ずっといろんなものにぶち当たっています(笑)。

感謝している高良健吾さんの言葉

── 撮影は2年前とのこと。この2年で考え方にも変化があったとおっしゃっていましたが…。

 

福山さん:

いろいろな役をいただけるようになったことで「自分は何にでもなれる」と過信していた時期がありました。

 

作品や演じるキャラクターを深く掘り下げずに、「このテイストなら、こんな感じでいけるかも」と、分かったつもりというか、分かっているふりというのか…。そうすると、やっぱり深い表現にはならなくて、結果、悩むという思考に陥ってしまいました。

 

そんなとき、プライベートで地元・福岡を高良健吾さんとドライブする機会があって、「翔大はもうちょっと自分を大切にしたほうがいいと思う」と言われました。

 

その言葉の意味をいろいろと考えるなかで、もっと悩んだほうがいいし、分からないことは分からないと言っていいし、分かったふりをしてはいけない。そういうことをひっくるめて「逃げない」という結論に至りました。

 

いいタイミングで素敵なお言葉をいただいたことに感謝しています。

 

── 「逃げない」という結論に至ってからは悩むことも少なくなったのでしょうか?

 

福山さん:

悩みの種類が変わって、また新たな悩みに直面しています。悩みはなかなか尽きないですね(笑)。

 

それまでは「セリフをどう言おうか、キャラクターをどう演じようか」と悩んでいましたが、今は「その場にどう居ようか」に変わりました。

 

役としてそこに存在するためにはどうすればいいのか。少し前の自分なら、まずは声色や話し方などを考えていましたが、今は、どちらのスキルも大事だけど、当て勘のようなことも必要と考えるようになりました。

かっこいいと思う男性は「穏やかな人」

── 現在27歳の福山さんの「なりたい大人の男性像」を教えてください。

 

福山さん:

僕が思うかっこいい男性は、穏やかな人。主役として作品の真ん中に立つためには、穏やかであることは大切な要素だと思っています。「自分の機嫌が取れない大人は赤ちゃん」という言葉は、まさにその通りだと思うし、自分も気をつけようという気持ちになります。

「自分の機嫌が取れない人は赤ちゃん」はその通りだし自分も気をつけようと思う

イライラしてしまうのは仕方ない。そんなときは、自分の気持ちを相手に伝えて、コミュニケーションをとって解決しようと考えるようになりました。イライラしている人とは一緒に仕事したくないですから。自分がそう思われないように気をつけています。結構イライラしちゃうタイプなので(笑)。

 

学園モノをたくさんやっていた頃は、同年代との芝居が多かったのですが、最近は制服よりスーツの役が増えてきて、年上、年下との共演機会も増えました。さまざまな年代の人と接するなかで、いろいろと吸収していけたらと思っています。

雑に過ごしていたら何も積み上がらない

── 30代に向けてやっておきたいことはありますか?

 

福山さん:

何歳までにというプランはありませんが、何年かかってもいいので、自分が主演の映画で世界に行くという目標はずっと持っています。これだけは必ず達成したいです。

 

自分が真ん中に立つメイドインジャパンの日本映画で、世界に。そのタイミングが30代でやってきたら、すごくうれしいし、そういうチャンスが来たときには、いろいろなものを受け止められる人間力を持ち、座長として現場を包み込める役者になっていたいです。30代では、まだ早いかな…。

目標は、自分が主演の映画で世界に行くこと

そうなるために30代を過ごすなら、すべてのことを丁寧にやっていくこと、積み重ねていくことが大切だと考えています。

 

人と丁寧に接することで、例えば「あの現場で、あのとき、こういうことがあったよね」と話せるエピソードが生まれます。雑に接していたら、話せるエピソードも積み上がるものもない。大切なことを見逃してしまうと思うんです。

 

30代で主演をやるためにも、大好きな映画をたくさん観たり、芝居に関する勉強は当たり前にします。と同時に、出会う人と丁寧に向き合うことを軸に頑張っていきたいと考えています。

 

PROFILE 福山翔大さん

俳優。1994年生まれ、福岡県出身。主な出演映画は『花束みたいな恋をした』、『ブレイブ -群青戦記-』、ドラマは「恋はDeepに」、「#家族募集します」など。2022年はドラマ「クロステイル 〜探偵教室〜」、「明日、私は誰かのカノジョ」などに出演。

取材・文/タナカシノブ