「言っても無駄」は離婚への一歩
離婚も解決策のひとつではありますが、結婚生活を継続させたい気持ちがあるのならば、まずはパートナーに「完璧な理解」を求める気持ちを手放しましょう。
「わかってほしい」と強く思い、一方的に相手に変化を願う気持ちは、実は自分自身の承認欲求の現れでもあります。人はそう簡単にはその性質を変えられません。
その前提を踏まえた上で、伝え方を変えてみましょう。「どうしてやってくれないの」ではなく、どんな言葉、どんなアプローチならば、相手にしっかり伝わるかを模索していく。その場ごとの言葉よりも、チャットツールを活用したり、ルールを一緒に相談したりするほうが有効な場合もあります。それぞれのスタイルに合ったコミュニケーションの方法を、夫婦で探していくことをおすすめします。
逆に、もっとも避けてほしいのは、「どうせ言ってもムダ」と諦めて、妻側が内にこもってしまうことです。
「自分はそれが嫌だ」と感じている気持ちを相手に伝える=外に出していくことは、パートナーとの信頼関係を築いていく上でとても大事なこと。たとえ100%の理解は得られなくても、「理解しようとしてくれている」姿勢が伝わってくれば、人は相手を寛容に思えるようになります。
自己主張するときの2つの秘訣
このとき、伝え方のポイントは2つあります。
ひとつは「嫌味を織り交ぜない」こと。自分の主張に嫌味を織り交ぜてしまうと、言われたほうに怒りやイライラが誘発されてしまい、本当に伝えたい内容が濁って伝わらなくなってしまいます。
もうひとつのポイントは、「言い続ける」こと。HSP気質を持つ人は自己主張が苦手なことが多いのですが、自己主張は決して悪いことではありません。むしろ、自分の思いを外に出す行為は、自分という人間を形成していく上で、必要不可欠な作業です。
嫌味に言うのでも責めるのでもなく、「自分はこうしてほしい」という主張を、諦めずにコツコツと言い続ける。そんな風に、夫婦のコミュニケーションを見直してみてはいかがでしょうか。
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完璧な理解や共感は得られなくても、パートナーへの不満はためこまない。嫌味を織り交ぜずに、コツコツと伝え続ける。コミュニケーションの方法を試行錯誤してみる。
HSP気質を持つママはもちろんですが、夫婦間のコミュニケーションに悩んでいる人も、ぜひ今日から実践してみてください。
次回は「産後、独身の友人と話が合わなくなった」というHSPママの悩みについて。人付き合いに悩む子育て中のママにも、きっとヒントが見つかるはずです。
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十勝むつみのクリニック院長。北海道大学医学部卒業。脳外科研修を経て神経内科を専攻し、日本神経学会認定医に。小児精神科医として道立札幌療育センターに13年間勤務。道立緑ヶ丘病院精神科勤務を経て、2016年にHSP診療に専念したクリニックを開業。日本では数少ないHSP臨床医。
文/阿部 花恵 イラスト/福田玲子