「ネントレ」という言葉を聞いたことはありますか?
ネントレは「ねんねトレーニング」の略で、授乳や添い寝、抱っこでゆらゆらなどをせずに赤ちゃんが自力で眠りにつく方法を身につけるための方法です。
欧米では広く一般的に行われていますが、日本では、添い寝や川の字寝で眠る家庭が多く、「ネントレをやっています」という赤ちゃんのママは多くありません。
今回は、ネントレのいろいろなやり方や、実際にネントレをした先輩ママたちはいつから始めたのか、挫折してしまった人の理由、ネントレ本の選び方などについて紹介します。
ネントレ=ねんねトレーニングとは?
ひとことで「ネントレ」といってもやり方が統一されているわけではなく、いくつかの方法があります。
おもなネントレの方法は次のようなもの。
一日のスケジュールを作る
起床、授乳や離乳食、お昼寝、入浴などは時間を決めて毎日同じ時間に行います。ネントレに限らず、規則正しい生活は基本ですね。
また、胎児は1日が25時間周期で、生まれてからも放っておくと24時間周期に合わせられずだんだんと睡眠時間がずれてくるという説があります。
そのため、毎日決まった時間に決まった行動をすることで25時間の体内時計をリセットするという考え方もあるようです。
他にも、赤ちゃんは月齢により何時間起き続けていられるかがほぼ決まっているという説にもとづいて、月齢ごとに1日の生活パターンを設定する方法も提唱されています。
入眠儀式を作る
抱っこされたり、おっぱいを飲んだりしているうちにいつの間にか眠ってしまいベッドに降ろされていると、赤ちゃんは自分で眠ることを覚えられないので、別の方法で「今から眠るんだよ」と教えていきます。
具体的には次のような方法が取られます。
- 部屋を暗くする
- ぬいぐるみやタオルを持たせる
- 音楽をかけたり、子守歌を歌う
- おしゃぶりを渡す
- 絵本を読む
- 背中をトントンする
泣いても授乳や抱っこをしない
泣いたら授乳や抱っこでいつの間にか眠らせるということをしないのがネントレ共通のルール。
ただ、赤ちゃんが眠りにつけず泣いたときの対処方法はさまざまで、大きく分けて、「泣かせるネントレ」と「泣かせないネントレ」があります。
「泣かせるネントレ」やり方の例
赤ちゃんに、愛情をこめて「おやすみ」と声をかけたら、部屋を出ていきます。
泣きだしたらすぐに駆け付けず、3分泣かせてから部屋に行って2分だけ声をかけ、側にいます。この間も絶対に抱き上げず、時間が来たら声をかけて部屋を出ていきます。
そして、徐々に泣かせる時間を長くしていくと、しだいに赤ちゃんは自分で眠れるようになっていくというのが「泣かせるネントレ」の考え方。
部屋に入らずにしばらく泣かせておくため、赤ちゃんに異常がないかどうか、ベビーモニターを設置して様子を見ることがすすめられています。
「泣かせないネントレ」やり方の例
赤ちゃんがウトウトしてきたり、寝るべき時間になったら、完全に眠ってしまわないうちにベッドに置き、抱っこや授乳なしで眠りにつく瞬間を体験させて覚えさせます。
赤ちゃんが泣き出しても抱っこや授乳はしないのは同じですが、放置せずに赤ちゃんのもとへ行き、眠れない原因を探して取り除きましょうというのが「泣かせないネントレ」。
トントンしたり体をさすったり、おむつ替えや汗の様子を見たり、抱き上げずに軽くハグしたり、ビニール袋のカシャカシャ音を聞かせたり、声をかけたりします。
「泣かせるネントレ」「泣かせないネントレ」共通のやり方としては、新生児期を過ぎてネントレを始めるときには、まだ言葉がわからないと思ってもちゃんと赤ちゃんに説明をする必要があるということです。
いつからネントレを始めた?
それぞれのネントレ方法によって始めるのに適した月齢がありますが、一般的には、月齢が低ければ低いほど新しいやり方が身に付きやすいといわれます。
新生児については欲しがるだけ好きな時に授乳や抱っこをして、生後3か月または4~5か月に始めるという方法もありますが、中には新生児期からスタートする方法も。
ネントレを実践したママのあいだでも、母乳育児かミルク育児か、ママの復職の有無などによって開始した時期は異なるようです。
ネントレを失敗・断念したママの体験談
ネントレをやってみたものの結局やめてしまった…という人も多く、それには次のような理由があったそう。
「子どもが大泣きしているとき、単にスムーズに眠りに戻れなくて泣いているのか、何か他に原因があるのかがどうしても判別できなくて。一度、ゲップかも…でも抱き上げたらダメだし…と思いながら30分以上泣かせていて、ついに抱き上げて背中をトントンしたら、大きなゲップが出て、すぐ寝てしまったことがあり。次に泣いたときもお腹が空いているのかも?とますます自信がなくなってしまいました。私には向いてないかも」(Kさん・28歳・当時3か月児のママ)
「泣いても抱っこや授乳をしないことが必要とあったので、声をかけるだけで見守ろうとしたのですが…泣き疲れて寝そうと思ったらまた泣き出して、今度こそ寝るかと思ってもまた泣いて…の繰り返しで、結局2時間以上経って授乳時間になってしまいました。寝てくれる時の方が少ないので、これじゃあまり意味がないと思い、今はある程度泣き続けたら授乳するスタイルに切り替えました」(Wさん・30歳・当時4か月児のママ)
「朝まで9時間眠ってくれるという夢のような状態にあこがれてネントレにチャレンジしたものの、本当に大きな声で泣く泣く…上の子も目を覚ますし、アパート住まいなのでさすがに近所迷惑が心配であきらめました」(Yさん・32歳・当時4か月児と2歳児のママ)
また、ご近所だけではなく、家族から「かわいそう」「ここまで泣かせなくても」と反対されて断念することも多いようです。
ママ自身も、赤ちゃんが大泣きしているのはつらいもの。泣かせっぱなしで抱っこしないことで信頼関係が壊れてしまわないかという不安もあるだけに、反対されてもやりきるのはかなり難しく、夫婦の目標が一致していないと挫折してしまうことが多いのですね。
ネントレの本を参考にするときのポイントは
インターネットの情報でもある程度はネントレの進め方は分かりますが、ネントレには何通りも方法があるため、腰を据えてやるのなら、本を1冊持っておくのもおすすめです。
本選びのコツは次のようなもの。
できれば妊娠中に読んでおくといい
育児がスタートしてからでは時間がなく、細切れにしか読めなかったり、前に読んだところを忘れてしまったりで効率が悪くなります。
また睡眠不足が続いて限界…という状態では、本当はあまり納得できない内容なのに「とにかく寝てくれれば」と冷静な判断ができなくなる可能性もあります。
可能なら妊娠中に図書館や書店で何冊かの本に目を通し、どんなメソッドなのか、自分の性格に合いそうかなどを考えておくといいですね。
月齢に合った本を選ぶ
新生児向けの方法と、2~3か月以降に合った方法、月齢ごとに細かくスケジュールが書かれた本とそうでない本などがあります。
適した時期を過ぎてしまってから買うともったいないので、ブックレビューなども参考に、月齢に合ったものを選びましょう。
どこの国発祥かを確認
ネントレは、基本的にヨーロッパやアメリカなどの生活様式に基づいて考えられた方法。英国王室の乳母やベテランのベビーシッターなどが著者のネントレ本も有名です。
ただ、海外では、赤ちゃんを1人で寝かせるかわりに日中はキスやハグをしたり「愛してる」と頻繁に言い合うなどのコミュニケーションがさかんなのに対し、日本ではそこまでオープンな愛情表現が苦手な人もいます。
そのため、最近では、欧米のやり方を取り入れつつ、日本人の生活様式や価値観に合わせたネントレ本も多く出版されています。
海外発と日本発、いずれを選ぶにしても、自分が納得できる方法かどうかを確認してから買うのがおすすめです。
いろいろなネントレ方法、人によって合う・合わないがある
ネントレ本に掲載された体験談を見ると、「3日で朝までスヤスヤ」といったものが並んでいますが、100%その通りにうまく行くわけではありません。
ダイエット法や勉強法と同じく、たまたまその方法が合っていれば感動するほどの効果が出ることもある、と考えた方がよさそうです。
また、例えば「泣かせるネントレ」は、泣きすぎるとすぐ吐いてしまう子、憤怒ひきつけを起こしやすい子、アトピーなどがありかきむしってしまう子には無理強いしない方がいい場合もあります。
赤ちゃんは時に、体が急成長したのに胃の大きさがついていけず、一時的にミルクの量が足りなくなって何度も泣くこともあります。そのような時まで泣かせておくのは赤ちゃんにとって良くないでしょう。
ママの体調や家族の生活パターンによっても、心を鬼にしてネントレを頑張るべきか、今まで通りでいくべきか考える必要があります。
例えばママやパパの腰痛がひどい時は、ひたすらだっこして耐えるより、短期集中型のネントレに挑戦したがいいかもしれません。
上の子の習いごとの送迎やお友だちが遊びに来るなど、スケジュールをきっちり守れないこともありますし、日曜日くらい、赤ちゃんが寝ていたらママやパパも少し寝坊したいという気持ちも分かりますよね。そんな時には厳格にスケジュールを守るネントレは向かないかもしれません。
赤ちゃんや家族の状況により、ネントレ方法にも合う合わないがあることを心得ておきましょう。
ネントレのまとめ
今回は「ネントレ(ねんねトレーニング)」について紹介しました。
どんな子も朝までぐっすり眠れる魔法のようなネントレはなく、うまく行くかどうかもケースバイケース…というのがお分かりいただけたでしょうか。
毎日の抱っこや添い寝が大変とはいえ、体力的に耐えられる範囲で、ママ自身がこの時間を楽しみたいと思うのなら無理にネントレをする必要はありませんし、反対に周囲が赤ちゃんがかわいそうだと責めても、愛情を持ってやり通す決意があればネントレをやめる必要はないと思います。
赤ちゃんがぐっすり眠れるような環境を整えることは全てのママ・パパにできると思いますので、まずはそこから始めてみては。
文/高谷みえこ