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最近よく聞く言葉に睡眠負債というものがあります。これは、日ごろの睡眠不足がどんどん貯まっていく現象のことです。世界中の研究者が注目していることの一つでもあるのです。 実は、この睡眠負債は貯めた状態のままだと、がんや糖尿病、また、認知症といった重大な病気につながっていくとも言われているのです。そのリスクを避けるには、睡眠負債を返済しなければなりません。どうやれば返済できるのでしょうか。

■睡眠負債って何?

最近よく聞くようになった言葉に「睡眠負債」という言葉があります。「睡眠不足」という言葉は以前からあるのですが、どう違うのでしょうか。 「睡眠不足」はその日だけのことも含むのですが。「睡眠負債」というのは、「睡眠不足」が積み重なった結果の累積のことなのです。 スタンフォード大学の研究者が提唱した言葉で、その意味合いには睡眠不足の積み重ねだけではなく、それによって心身に悪影響をもたらすリスクのことも含んでいるのです。 睡眠負債が貯まったら週末にしっかり寝ることで解消すればいいと思うかもしれません。ですが、普段より長い睡眠をとっても、質の良い睡眠にはなりません。睡眠の後半は眠りが浅いものになってしまうのです。そのため、寝だめでは睡眠負債は解消というか返済はできないのです。 逆に生活のリズムが乱れてしまい、次の週の睡眠不足を招いてしまうこともあるのです。 睡眠負債を返済するには、寝だめではなく、しっかりとした質のよい睡眠をとらなければならないのです。

■睡眠負債によるリスク

睡眠不足や睡眠負債による心身へのリスクにはさまざまなものがあります。単純に眠い・体がだるいといったことだけはないのです。 ストレスもそのリスクのひとつです。寝不足になると疲れてイライラすることがあります。そのため、誰かを責めたり、八つ当たりをするといったことがあります。その結果後で後悔することになったり、人間関係に問題が出ると、そのこともよりストレスとなってしまうのです。この状態が続いてしまうと、うつ病の原因となることがあるのです。 また、高血圧のリスクも高まります。本来血圧は起床時から日中に血圧が上がっていき、夜にかけて下がっていきます。ですが、睡眠不足の状態だと、寝ている間も血圧が高いままとなってしまうのです。これが、ずっと続いてしまうと、心筋梗塞や脳卒中といった重大な疾患のリスクが大きくなってしまうのです。 これらのリスクは睡眠負債によるリスクのごく一部にしかすぎません。それほど睡眠負債は心身に対して大きなリスクとなってしまうのです。

 

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■睡眠負債を返済するには

睡眠負債を返済するには、単に寝るだけでなく、その眠りを質のよい睡眠にする必要があります。そのための方法はいくつかあります。それらを数多く実践することで質の良い睡眠が得られやすくなるのです。 まず、朝起きて午前中に日の光を浴びることです。これにより、14時間後くらいに睡眠ホルモンであるメラトニンが分泌され眠りやすくなるのです。また、寝る前はPCやスマホを使用しないということも大切です。交感神経が刺激されるということもあるのですが、メラトニンの分泌が抑制され眠りにつきにくくなってしまうのです。 同じように、寝る前は蛍光灯などの光全般を避けたほうが良いです。 当然ですが、夜はカフェインを摂らないということも大切です。眠るには入浴の3時間後くらいが適しているので、眠る時間に合わせてお風呂にはいるとよいです。また、眠る2時間くらい前に軽い運動をしておくと眠りやすくなります。 こういったことを心がけて実践すると、眠りやすくなるだけでなく、睡眠の質もグッとあがり、短時間の睡眠でも睡眠不足になりにくくなります。結果として睡眠負債も返済しやすくなるのです。

■質の良い睡眠のためには寝具も大切

質の良い睡眠をとるには、寝る前の準備だけでなく、寝る際の寝具もとても重要な要素となります。枕が変わると眠れないということを聞いたことがないでしょうか。それほど、枕も睡眠にとって重要な要素の一つになっているのです。 枕で最も大切なのがその高さです。枕の高さが高いと気道が狭くなってしまい、「いびき」の原因となります。近年多くなっている睡眠時無呼吸症候群はこの枕の高さが原因となっている場合もありそうです。 では低ければいいかといえばそうでもありません。低すぎる枕の場合、頚椎に負担がかかってしまいます。その結果として肩こりや寝違いの原因となってしまうのです。これでは、質の良い睡眠を得ることはできません。 人にはそれぞれ自分に合った枕の高さというのがあります。直立しているときの背骨の状態と寝ているときの状態が同じであることが理想とされているのです。 市販の枕でしっくりこないといった場合、オーダーメイドの枕を検討してみてもいいかもしれません。

■まとめ

睡眠負債は質の良い睡眠でしか返済できないというのは理解できたのではないでしょうか。そのためには、質の良い睡眠が得られる状況を作る必要があります。 起きている状態でその環境をつくることは難しくありませんが、寝ている状態で良い環境を作るには、やはり寝具、特に枕が大切になるのです。 最近では、医療機関で枕外来と呼ばれる特殊な外来を行っているところもあります。主に整形外科等で行われているのですが、こういったところで診療を受けているのもひとつの方法ではないでしょうか。