- 退職したいけれど、会社になかなか言い出せない
- 会社から退職を勧められている
- 自己都合退職と会社都合退職の違いは?
- 離職票を発行してもらえない場合どうしたら良いのか?
- 会社が有給消化を認めない…
- 辞めたいと言ったら違約金を請求された
- 未払いの給料や残業代、退職金を払ってもらえないとき、どうしたら良いのか?
会社を退職するときにはいろいろな法的問題が発生する可能性があります。 先日公開した『
円満退職できなかった4割もの転職経験者が陥ったある共通点』が反響を呼びましたが、今回改めて退職に対して知っておくと役立つ知識を、元弁護士の福谷さんにご紹介していただきます。
1.退職は従業員の権利
最近では「会社に退職を言い出せない」というお悩みを抱えた方が増えています。しかし退職を遠慮する必要はありません。 期間の定めのない労働者(=正社員)の場合、雇用者に退職を申し出ると14日で退職することが可能です。 ただし「月給制」の場合は例外で、当期期間の前半に申出をすれば次期に退職できます。たとえば給与が末締めの場合、3月1日から末日(次期)に退職するには、2月15日(当期前半)までに退職届を提出する必要があります。つまり15日までに退職を申し出れば月末に退職できるイメージです(末締めの会社の場合)。
2.退職代行業者について
自分で退職を言い出せないので「退職代行業者」を利用される方もいますが、「非弁」のおそれがあるのであまりお勧めではありません。非弁とは弁護士以外の人が交渉などの法律業務をする違法行為です。もしも退職代行を依頼するならば、弁護士を利用しましょう。
3.無理矢理退職させられることはない
退職に関しては「退職強要」も時々問題になります。これは、企業側が従業員に退職を強要するトラブルです。解雇すると「不当解雇」と言われる可能性があるので、従業員側から退職したという形を整えようとするのです。 しかし退職の強要は違法ですし、強制された退職届も無効です。 退職を勧められても辞めたくなければ退職届にサインする必要はありません。強制的に退職届を書かされたら慰謝料を請求できる可能性もあるので、弁護士に相談して退職の無効を主張して争ってもらいましょう。
4.自己都合退職より会社都合退職の方が有利
退職する場合「自己都合退職」と「会社都合退職」の2種類があります。自己都合退職は、従業員側の理由で退職する場合、会社都合退職は会社側の理由で退職する場合です。 労働者にとっては、「会社都合退職」の方が有利です。会社都合の場合、失業保険を早めに受給開始できますし受給期間も長くなるからです。会社都合退職では、待機期間の7日が過ぎると失業保険を受けとれますが、自己都合退職の場合には待機期間の7日後、さらに3か月が経過しないと失業保険を受けとれません。つまり失業期間の受給開始が3か月間遅れてしまうのです。 退職する際、会社都合か自己都合かは微妙なケースもあります。自ら退職を申し出ても会社都合にしてもらえる可能性があるので、辞める際に「会社都合にならないでしょうか」と相談をして、できる限り会社都合にしてもらうと良いでしょう。
5.離職票が発行されない場合
退職後、失業保険を受給するためには「離職票」が必要です。離職票は退職の理由や直近の給与額などが書いてあり、失業保険の内容を判断する資料となる書類です。会社がハローワークに離職票の申請書(3枚複写)を提出し、ハローワークが発行して会社に返送します。そして会社が受けとった従業員控えを退職した従業員宛に送る制度になっています。 ところが会社とトラブルになって退職したケースなどでは、会社が離職票発行の手続きをしないことがあります。 そのような際には、一度ハローワークに相談に行きましょう。 ハローワークから会社に連絡を入れて離職票の発行を促すことにより、会社が対応することもよくあります。それでも会社が対応しない場合、最終的にハローワークの職権で離職票を発行できる制度もあります。 このように、会社が離職票の発行に積極的でなくても失業保険を受け取ることができるので、安心してください。
6.有給消化は労働者の権利
退職の際によくある法律問題として「有給」の消化があります。一般に労働者が退職する際には「有給」が残っている場合が多いです。その場合、最後の方は有給を消化して実際には会社に出勤しません。ところが悪質な会社の場合、有給消化を認めないケースがみられます。 有給取得は労働者に認められた権利であり、会社が有給を取得させないのは違法です。 消化させてもらえないときは、それが違法行為であることを伝えてみましょう。 会社の態度が変わらないなら、労働基準監督署に申告するのも1つの方法です。それでも解決できなければ、労働問題に強い弁護士に相談をして対応してもらいましょう。
7.違約金の差し引きは違法
退職しようとすると「違約金を払え」「会社に借金があるからそれを天引きする」「退職によって会社が損害を受けるのでその分を給与から差し引く」などと言われるケースが稀にあります。 しかし給与からの違約金等の差引は一切認められていないので、このような言動を真に受ける必要はありません。会社には違法行為であることを伝え、それでも態度が変わらなければ労基署に申告しましょう。労基署からの指導勧告により、会社側の態度が改まる可能性があります。
8.未払いの給料、残業代、退職金請求について
会社を辞めようとしたとき、給料や残業代が未払いになっているケースがあります。定められた退職金を払ってもらえない場合もあるでしょう。 そのような場合、退職後に給料や残業代、退職金の請求が可能です。ただしこれらの請求権には時効があり、給料や残業代は2年以内、退職金は5年以内に請求する必要があるので、早めに対応しましょう。
退職するときには、いろいろな法律トラブルが発生する可能性があります。万一のときに備えて押さえておいてください。
文/福谷陽子