
『秋は林をぬけて』 小泉るみ子
この絵本の舞台は北海道。主人公の「わたし」は、小学校に通う農家の女の子です。 特別な事件は起こりませんが、多くの人が懐かしく思い出す子ども時代の日常が淡々とやさしく描かれています。 秋の草原や色づく林、収穫時期の果樹園、炭鉱の夕暮れなどが美しい色合いで表現され、ひんやりした秋の空気や落ち葉のにおいまで感じられるようです。 女の子の顔はあえて描かれていないので、読む人は自分の子ども時代に思わず重ねてしまうのではないでしょうか。
この『秋は林をぬけて』は、春・夏・秋・冬と、大自然の中で暮らす少女の一年間を描いた4冊セットのうちの1冊です。 シリーズの他の作品には、冬の厳しい寒さとそこに生きる家族や馬との暮らしをいきいきと描いた「ふぶきのあとに」、雪の下からお母さんと一緒に掘り出すフキノトウや松の新芽などからみずみずしい春の訪れを全身で感じられる「カッコウが鳴く日」などがあり、いずれも「これほど北海道の冬の情景を表している絵本は見たことがない」「どの年代の人にも薦められる」と、大人からも高い評価を得ています。
出典:『秋は林をぬけて(小泉るみ子四季のえほん)』 小泉るみ子作 ポプラ社 2001年初版