赤ちゃんの時期を過ぎ、1歳後半あたりからのママの悩みで多いのが、「気にいらないことがあると叩く・手が出てしまう」というものです。 特に悩んでいるママが多いのは2歳台。イヤイヤ期とも重なり、叱ったり言い聞かせたり、いろいろ工夫してもすぐに叩くのがおさまらないことも多いのが特徴です。 きょうだいで同じように育てても、手の出やすい子とそうでない子がいるように「育て方」がすべてではなく、生まれ持った性格もあるようですが、やはり少しでも早く何とかしたいですよね。
今回は、「ママを叩いてしまう子は、なぜ叩くのか」を年齢別に見ていったあと、「叩くのをやめさせるための良い対応・悪い対応」などについて考えていきたいと思います。
目次
どうしてママを叩くの?
ママを叩いてしまう理由には、年齢によって違いがあるようです。まずは年齢ごとにみていきましょう。
1歳児がママを叩く理由
自分の意志で自由に手足を使えるようになる1歳半頃から、何かを注意されたりやめさせられたことで怒ってモノを投げたり、ママを叩いてくる子が出てきます。
なかには同じ状況でも平気な時と怒り出す時があったりして、タイミング・理由が分からないことも。 また「たたかれた相手の痛さ」は1歳台ではまったく想像できませんが、叩いた時の大人の反応から、良いこと(承認)か悪いこと(非承認)かは判断できています。 ただし、判断できたからといって「悪いことだからやめよう」といった自制はまだまだききません。
2歳児がママを叩く理由
2歳前後から、受け身だった赤ちゃん時代を卒業し、自分で判断・選択したい「イヤイヤ期」に入ります。
この時期に今までと変わらず、ママの判断だけで「こうしなさい」という接し方を続けていると、子どもの自我の成長と正面衝突してしまい、かんしゃくを起こしたり、手が出てしまったりする子もいます。
また「自分でやりたい!できるはず!」という意欲と、実際にやってみるとうまくいかない現実とのギャップで、身近なママに八つ当たり的に手が出てしまう子も。
そして、保育士さんのアドバイスなどで最もよく言われるのは、やはり言葉との関連。もっと遊びたい・このおもちゃを取られたくない・眠いなど、伝えたい気持ちはたくさんあるのに、まだ言葉がうまく話せないので、かわりに手が出てしまうというものです。
そのほか、遊びが盛り上がってハイテンションのときになぜか周囲の人を叩いてしまう子もけっこういるようです。
実は、3歳頃までの子は、「自分の感じていることは、相手も同じように感じている」ととらえていると発達心理学では言われています。いま自分が興奮して周囲をバンバン叩くのが楽しいから、相手もきっと楽しいに違いない!と思いこんでしまうのですね。
3歳以上の子がママを叩いてしまう理由
3歳を過ぎると、「言葉が出ないことで手が出てしまう」というケースはずいぶん減ってきます。
この時期の子でよく聞かれるのは、「幼稚園や保育園はすごく頑張っているが、家では小さなことでキレてママやきょうだいを叩く」というもの。 頑張り屋さんの子は、3歳でもすでに「泣くのは弱い、恥ずかしい、泣かないように頑張らないといけない」と心に決めています。
でも、実際はイヤなことも泣きたいこともあって当たり前ですよね。上手にママに愚痴を言って吐き出せればよいのですが、それさえも自分で良しとしなかったり、ママやパパが「そんなことくらいで何言ってるの」という雰囲気だったりすると、必要以上に頑張ってしまった結果、水があふれるようにちょっとしたことで怒り出しパニックになることがあります。
こんな対応はNG?
次に、子どもが叩いてきた時の対応としてよく言われるものをいくつか挙げてみます。本当に効果があるのか、そうするべきではないのか…それぞれ理由を考えてみましょう。
泣きまねをする
子どもが叩いてくるようになり、真剣に言い聞かせてもやめようとしない場合に、1回だけ泣き真似をしてみるのは良いと思います。
実際、「最初ポカンとしてから、子どもも号泣してしまいました。その後、痛いからもう叩かないでね?と約束しできました」という成功談もあります。
ただ、何回も泣き真似を繰り返したり、ウソ泣きだと見抜かれてしまったりすると、子どもが「遊び」だと認識してしまい逆効果です。 また、子どもが園でウソ泣きして要求を通そうとする…と保育士さんに指摘され、あわててやめたというママもいましたよ。
ガツンと叱る
ママを叩いた時、叩こうとした時に真剣に叱るのは当然のことですが、それでも「ヘラヘラしている」「叩くのをやめない」「ごまかす」という反応の子もいますよね。 そこでもっと強く叱ると泣き出して終了…となればいいほうですが、かんしゃくを起こし、手が付けられなくなることも珍しくありません。
ここで心に留めておきたいのは、「今すぐ結果を出そうとしない」こと。 「ごめんなさい」「もう叩かない」と約束させようとしてもなかなかその通りにはならないものですが、毎回そこまで到達しようと思うと焦ってしまい、次の「ママも叩く」という行動につながっていきます。
ママも叩く
叩いた子に、同じように手をぱちんと叩いて「こんなに痛いんだよ。だからダメなんだよ」と教える…というやり方のママもたくさんいると思います。その理由は「痛みを知らないから人を叩く。叩いて痛みを教えた方が良い」というもの。
もちろん、1回(または数回)で効果があり、二度とやらなくなったという子も実際にたくさんいます。
しかしこの方法は、短期的には効果があっても、今度は園でお友だちを叩くようになり、理由を聞くと「あの子が悪いから、分からせるために叩いた」と言うことが出てきた…という話も、保育士さんからよく聞きます。
そして一番心配なのが、はじめはママも冷静に叱っている・痛さを分からせているつもりが、子どもの癇癪に引きこまれて感情的になり、いつの間にかエスカレートしてしまうというもの。
一歩間違うと虐待につながるリスクもあるため、私は叩いて教える方法はおすすめしていません。
特に、感情的になりやすい自覚がある人や、もとはそうでもないけれど、最近は仕事や家事育児でいつも疲れていてストレスが多い…という人は、「ここまではOKでここからはやりすぎ」という判断ができず、コントロールが効かなくなる恐れがあります。
もともと「育児に正解はない」と言われています。身内やママ友から勧められても、自分は初めからこの方法をとらないと決めてしまった方が安心ではないでしょうか?
こう対応したらうまくいった!
最後に、実際に子どもが叩くことで困っていた先輩ママから聞いた、効果のあった方法や考え方をまとめて紹介します。
「近道なし。何度も言い聞かせるしかない。親が短気を起こしたら終わり。」
「叩こうとしたらサッと手をにぎって、この手は人を叩くためのものじゃないよ、と真剣に伝えました」
「なかなか言葉が出ないことで手が出ると聞いたので、“ここを早く通りたかったんだね。でも、叩くんじゃなくて、通してって言おうね”などと言いかえていました」
「育児の困りごと全般、祖父母・パパ・保育士さんなどに協力してもらい、普段叱らない人に叱ってもらうと効果絶大です!」
「私(ママ)自身が、何かにつけて“びっくりした!いやだった!すごく悲しい!眠くてつかれちゃった”など、感情をコトバで表す見本を見せるようにしました」
「叩かずに言葉で伝えられたら“叩かないで言えたんだ!すごい、よかったね、ママもうれしい”としっかりほめて一緒に喜びました」
「条件付きで愛情を与えていると、本当に自分が愛されているのか自信がなくなり、わざと叱られるような行動をとり始めると聞きました。そこで寝る前やお風呂など機嫌のいい時に“”ママもパパも、○○くんがいてくれて本当にうれしいな~かわいいな~“と口に出すようにしたら、だんだん叩くことが減りました」
子どもがママを叩く まとめ
子どもとはいえ叩かれればママも痛いし悲しいですよね。まして、他の子にも手が出る場合は、本当にママは対応に心を砕きます。 叩かないで育てても人を叩いてしまう子はいますし、親に叩かれたせいで人を叩いてしまう子もいて、何が正しいのか本当に悩んでしまうこの問題。
でも、あきらめずに伝え続けていけば、きっといつかトンネルを抜けるように叩かなくる日が来るはず。今回の記事が少しでも手助けになれば幸いです。
文/高谷みえこ