education20180926

日本人の赤ちゃんの多くに見られ、おしりから背中にかけて、青くアザが広がる「蒙古斑(もうこはん)」。 たいていは成長とともに薄くなり消えていきますが、まれに、お尻・背中以外に蒙古斑ができることや、大きくなっても蒙古斑が消えないことがあります。 今回は、蒙古斑の原因や消える時期はいつ頃か、消えない場合にどんな方法を取ればいいのか…などを調べてみました。

 

蒙古斑の原因


筆者の娘たちは二人とも、生まれてすぐは腰のあたりがうっすらと青くなっていたものの、1歳ごろには薄くなって消えていきました。それよりも乳児湿疹やアトピーがひどかったため、皮膚の心配事といえばそちらが中心。気づけば蒙古斑がなくなっていた…という感じです。

 

しかし、ママ友同士で話したり、園の参観で水遊びがあったりすると、「うちの子、蒙古斑まだ残ってるの…」「腕にあるんだけど、薄くならない」といった話題が必ず出て、蒙古斑が消えないことで悩んでいるママは少なくない印象でした。

 

そもそも、蒙古斑とは何が原因でできるのでしょうか?

 

「お腹の中にいる時に、おしりを下にしていたから、うっ血して青くなった」 「出産時に圧迫されてアザができた」

 

おばあちゃん世代から、そんな話を聞かされたママもいるかもしれません。  しかし、蒙古斑ができる仕組みは、打ち身や圧迫でできるものとは根本的に異なるそうです。 


 

打ち身の青アザは内出血が原因なのに対し、蒙古斑の青い色は血液ではなく「メラニン色素(メラノサイト)」によるもの。 人間の皮膚には、紫外線などから体を守るためのメラニン色素(メラノサイト)がありますが、通常、メラニン色素は「表皮」にしか存在しません。  ただ、赤ちゃんは、ママのお腹の中にいる時に体内で初めてメラニン色素を作り出し、生まれるまでにそれが全身の表皮に向かって広がっていくと考えられています。 そして、生まれたばかりの段階では、まだメラニン色素が表皮より奥の「真皮」にとどまっていることがあり、それが蒙古斑となります。

 

この現象は、なぜか黄色人種の赤ちゃんに特に多く見られる現象で、発現率は90%以上とも100%近くとも言われています。 メラニン色素は集合すると黒や濃い茶色、つまりホクロのような色になりますが、真皮に集まっている場合は、表皮を透かして灰色がかった青に見えます。

 

皆さんは子どもの頃、鉛筆の芯が手や足に刺さってしまった経験はありませんか?皮膚に残ってしまった鉛筆の色素は、やや青っぽく見えたのではないかと思います。蒙古斑が青く見えるのはそれと同じ原理なのですね。

 

蒙古斑はいつ消えるの?


蒙古斑は、生後すぐから2歳頃までは、逆に濃くなることもあるそう。2歳以降、少しずつ色が薄れていき、成長とともに消失するのが一般的とされています。 完全に消える時期については、医療機関や皮膚科学会の発表でも諸説があり、

 

「3歳までに消える」 「5~6歳までに消える」 「10歳までに消える」 「小学生の間には消える」

 

とさまざまなのが現状。

 

実際、周囲のお子さんの話を聞いていても消えた時期にはバラつきがあり、はっきりいつまでに消えるとは言えないようです。

 

そして、日本皮膚科学会によると、成人になっても残る蒙古斑は全体の約3%だということです。 残る場合は、赤ちゃん時代のように全体に広がった状態ではなく、直径2cm程度の円形になることが多く、これらは「持続性蒙古斑」と呼ばれています。

 

おしり、背中以外の蒙古斑もある


ところで、蒙古斑は、お尻や背中といったよくある場所以外に、肩・腕・手・足などにもできることがあります。

 

「真皮にメラニン色素が残っている」という現象は同じなのですが、おしりや背中と比べ、自然に消えていきにくいのが特徴で、これらは「異所性蒙古斑」と呼ばれます。 そのほか、蒙古斑ではない青アザとして、顔にできる「太田母斑」、肩から肩甲骨にかけてできる「伊藤母斑」などもあり、これらも自然に消えることはありません。 やや注意が必要なのが、直径1センチ以下の小さな青アザである「青色母斑」。もともとサイズが大きいものやだんだん大きくなってくるものは、悪性化する可能性があるので手術等で取り除く必要があります。

 

蒙古斑とそれ以外のアザを見分けるには、色や形状を見ると分かります。 均一に広がり境目がぼんやりしているのが蒙古斑で、アザの中に点々や色ムラがあったり、シコリ状・硬い盛り上がりのあったりするものは蒙古斑ではありません。 アザが気になる場合は乳幼児健診などで相談することもできますが、次の健診まで間があいていて心配…という時は皮膚科や小児科を受診した方が安心です。

 

成長しても消えない蒙古斑はどうしたらいい?


上記の、腕や脚などにできる「異所性蒙古斑」は、完全には消えなくても、10歳頃までに色が薄くなってくることが多いそうです。

 

蒙古斑の濃さや大きさには個人差があるので、成長した時点でほとんど気にならない程度であれば、そのまま放置しておくことも可能。  目立つ場所にあるなどで治療をする場合、現在メインになっているのは、形成外科または皮膚科でレーザー照射を行う方法です。

 

レーザーにもいくつかの種類がありますが、「Qスイッチレーザー」などおもなレーザー治療は「異所性蒙古斑」については保険が適用になります。「持続性蒙古斑」は保険対象外になるため、レーザー治療を検討する場合は事前にしっかり確認しておくことが必要です。 治療の期間や回数は、程度によって変わりますが、3か月以上の期間をあけて1~3回程度照射するのが一般的。 保険が適用になるのは5回目までですが、子どもの場合は、アザの面積が大人より小さいことや、表皮の透明度が高く患部にレーザー光が届きやすいなどの理由から、5回以内で完了することが多いそうです。 治療時には、面積が小さければクリームを塗るなどの局所麻酔(部分麻酔)で行うこともありますが、麻酔をしてもレーザー照射時にはゴムでぱちんとはじかれたような軽い痛みがあるそう。

 

泣いて嫌がる場合、1~2歳までは看護士さんが5~6人で押さえつけて治療をすることになります。それを避けるために全身麻酔と入院を条件にする病院もありますので、時期やお子さんの体調などもあわせて検討するようにしましょう。

 

まとめ


今回は、現時点で可能な「消えない蒙古斑」への対策を紹介しました。  蒙古斑やアザなどは、ごく一部の悪性のものを除けば、放置しておいても身体に害もなく安全なものがほとんどです。

 

それでも、わが子のこととなると、「かわいそう」「将来苦労するかも」「私のせいで…」とママもパパも悩んでしまうもの。 ママやパパの心情としては当然のことですが、これには、「見た目が良いほうが生きていく上で得をする」「他人からの扱いが変わる」といった、今の社会にも少し原因があるのではないでしょうか?

 

子ども本人の気持ちを考えつつ治療するしないを判断することはもちろんですが、私としては、本来、アザや障害・容姿など、見た目で笑われたり、差別されたり、引け目を感じたりすることなく生きられる社会になっていくのが一番だと思っています。

 

文/高谷みえこ

参考:一般社団法人 日本形成外科学会 「異所性蒙古斑」 http://www.jsprs.or.jp/member/disease/nevus/nevus_04.html

公益社団法人 日本皮膚科学会 「皮膚科Q&A アザとホクロ」 https://www.dermatol.or.jp/qa/qa21/