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現在、絶賛開催中の「大昆虫展in東京スカイツリータウン」(~92日まで)のアンバサダーを務める哀川翔さん。「カブトムシ愛好家」として知られ、これまでたくさんのカブトムシを羽化させてきた経験を持つ哀川さんに、昆虫との付き合い方や心得、その魅力などを伺ってみました。


 

 

――こちらの「大昆虫展in東京スカイツリータウン」には親子連れで訪れるお客さんも多いです。子どもは虫好きだけど、自分は虫が苦手…というお母さんもいるかと思うので、まずは「虫と向き合う心得」を教えてもらえますか。

 

慣れるから大丈夫()。カブトムシなんか、環境さえ整えてカゴに入れておけば本当にジッとして大人しいものだし、見続けていると意外と可愛いものだよ。これまで飼ってみて、もしバタバタしていたのが怖かったなら、それは居心地が悪かったからだよ。

 

――虫にとって、どのような環境が居心地が良い?

 

まずは温度。エアコンが効いた部屋は俺たちも快適でしょ。人間が快適なところは虫も快適なんだよ。むしろ人間が少し肌寒いと感じるような場所が好きだから、外出中もエアコンは必須だね。 次に暗いところ。奴らは夜行性だから、俺の家の虫部屋は真っ暗。 そして水分。虫用の容器に入れて入れておけば自然と全体に水滴がつくから、容器全体を濡らさなくても、湿らせたマットや専用のオガクズチップを敷いておけば大丈夫。専用のチップはコバエが来にくく出来てるよ。コバエ対策には、エサをマメに取り換えるのも大事。毎日取り換えないと、そこにコバエが卵を産んで孵化しちゃうんだよ。これまで虫かご周りにコバエが発生して困ったという人は、そういう専用のチップやエサに気を配るだけでコバエに悩まされなくなると思うよ。

 

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 ――自分が「飼いたい」と言い出したわりに世話をせず、結局ママがやることになるというのもよくある話です。

 

幼稚園児くらいなら図鑑の読み方もわからないし、仕方ないよね。それでもやらせるなら、ある程度は世話を任せて、結果的に死んじゃってショックを受けさせてみるのも手。そうしないと覚えないし、そこは責めず、「可哀想だったね」で済ませてあげようよ。それでもまだ次も欲しがったら、「今度はちゃんとやりなさい。お母さんはしないよ」と言えばいいんだと思うよ。

 

――でも、やらないんですよね。「放っておいたら死んじゃうし…」という葛藤で、つい親がお世話しちゃいそうです…。

 

言ったからには、親も初志貫徹だね。子育てでもさ、俺なんか、放置されたオモチャを「次に俺が通るまでに片づけておけよ」と言った後に片づけてなかったら、全部捨てちゃうよ(笑)。みんな、「捨てるよ!?」と脅して、結局捨てないんでしょ。俺は、ゴミ箱の中に食べ残しのメシなんかと一緒にザパーンと放り込む。ごはんにまみれてグッチャグチャになって、子どもは大泣きだけど、「お前が片づけないからだろ」と言えば、その後は捨てられたくないからめっちゃ片づけるようになったよ。子どもは賢いから、「言ってもどうせ捨てないだろ」ってわかるんだよ。「捨てると言ったらうちの親は本当に捨てる」と思わせないと。

 

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昆虫の世話も同じ。「あなたが世話しないと死んじゃうんだよ」ということを耳が痛いくらい言ってやって、それでも面倒を見なくて死んじゃったら「さあ、どうする?」と問う段階だよね。うちでも以前、カブトムシがカラカラに乾燥して死んじゃったことがあって、「お前、いい加減にしろよ」と叱ったら、二度と飼いたいとは言わなくなったけどね()。それでも飼いたいという子は飼いたがるし、それで飼いたくなくなればそれまで。だって、飼いたくないヤツに無理やり飼わせる必要もないわけだし。


だけど、こういう昆虫展に来るような子は絶対に飼いたくなるもの。でもそれで死を経験したり、可哀想だと思う気持ちを経験させるのも大事だよ。飼ったことがない子たちとは感情が変わってくるから、生き物は一度は飼わせたほうがいい。とくに虫や金魚は簡単に死んじゃうから。場合によっては、こっちは何も悪くないのに一日で死んだりするから。

 

――それ、経験あります…。

 

だけど虫も、本当に寿命まで飼い続けられると、いろんなことがわかるんだよ。虫ってね、手先からもげていくの。少しずつパーツがとれていっても、エサをあげていればそれでも生きている。それが本来の寿命なんだよね。だけど飼い方がわからず、スイカでもやっておけばいいんだろという感覚だったり、夏の生き物なんだから暑くてもいいだろうと日が照るところに置いておいたら、一発で死んじゃう。虫かごを日なたに置くなんて、車に子どもを置き去りにするのと同じようなもの。一瞬で5060度になっちゃうもん。虫を飼いたがる子を持つなら、せめてその程度の知識を親は教えてあげないとね。

 

――夏休みとなり、自由研究にカブトムシの観察を選ぶ子もいるかと思いますが、どのように取り組めばいいか、アドバイスをお願いします。

 

夏休み中に死んじゃうことも多いから、それを標本まで出来れば立派に完結するよね。ただ今は、昆虫採集セットもあまり売ってないし、自分で乾燥させてやるには結構時間がかかるんだよ。一年目だとそれは厳しいから、最初は、オスとメスをつがいで飼って、卵を産ませるのがおススメかな。これなら夏休みの間中に出来るから、研究の中にも物語を作りやすいと思うよ。だいたい交尾を済ませたらオスが先に疲れ果てて死んで、メスは地中に潜っちゃうから、そうなったら専用の産卵マットをケースの3分の2くらいに入れてあげて。そのまま置いておけば、かなりの数の卵を産むよ。

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卵はケースの隅っこに産んでいることが多いんだけど、白くてちっちゃいから見逃さないように。7月に産んだ卵も、秋には親指くらいの大きさになるよ。そこまで自分で出来たら、次の年は幼虫からサナギ、サナギから成虫と、早い時期からいろんな観察も出来て、自由研究も楽しみになるよ。

 

――お話を伺っていると、自分も子どもの頃にはいろんな生き物に興味があったことを改めて思い出します。

 

みんなだいたいそうだよ。だから今は興味が離れちゃった人も、子どもの好奇心に引っ張られてみるのも時には大事だし、子どものためなら寄り添うこともできるよね。そういう気持ちが芽生えることで、親子のコミュニケ―ションもとりやすくなるんだから、頑張ってみてください。

 

取材・文/井上佳子 撮影/藤沢大祐

 

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哀川 翔

61524日、徳島県生まれ。80年代、一世風靡セピアのメンバーとして注目を浴び、その後、ドラマや映画等、幅広く活躍。「Vシネマの帝王」としても知られるほか、近年はバラエティ番組での活動も多い。釣りやメダカの飼育、昆虫採集など多彩な趣味を持ち、とくにカブトムシは2015年までに25000匹も羽化させたほどの実績を持つ愛好家。