8月に入りお盆が近づいてきました。毎年この時期になると「夫の実家に帰るか、妻の実家に帰るか」「気をつかうから義実家に帰るのは憂鬱」といった帰省に関するトピックスがSNSやネットを中心に話題になります。
「せっかくの休みなんだからゆっくり休みたい」「自分の実家に帰るのはいいけれど、義実家に行くのは気が重い」と思っている妻が多いということではないでしょうか。 そこで、嫁姑問題や子育てや女性の生き方についてのつぶやきが共感を呼び、Twitterのフォロワーが約10万人というミゾイキクコさん(84)に、「人生の先輩」としてのお話を伺いました。
ミゾイキクコさん
1934年生まれ。埼玉県出身。お茶の水女子大学理学部を卒業後、教職に就き、26歳から専業主婦に。2010年1月28日にTwitterを開始し、70年前から現在までの人々の価値観の変遷や、戦争中の経験、敗戦後の暮らし、高齢者問題などについてつぶやく。2018年8月現在でフォロワーは9万4000人超。
「無理に義実家に行く必要はない」
——今年もお盆が近づいてきました。子供がいる友人からは「義実家に行くのが憂鬱」という声もチラホラ聞かれます。みんな何となく「お盆は帰省」と思っているけれど、嫌なら帰らなくてもいいのでは?と思うのですが……。
ミゾイ:今回、取材にいらっしゃるということで、近所のお年寄りにも聞いてみたんですが「別に無理に実家に帰ってくる必要はない」って皆さん言っていたわよ。私もそう思います。
——そうなんですか?お年寄りは子どもたち家族に来てほしいと思っているもんだと思っていました。
ミゾイ:私にも息子が二人いるんですが、息子の家族が来ることになれば布団の上げ下ろしや食事の用意が大変じゃない。 例えば、長男の嫁と一緒に住んでいる人はお嫁さんがいて、お嫁さんに全部やらせるわけですよね。息子や娘の家族が泊りに来て歓迎するのはそういう家庭だけじゃないかしら。
——確かに。
ミゾイ:この辺のお年寄りは「無理に来なくていい」って言う人が多いわね。まあ子どもたちが「今年も行くね」と言うから「来るな」とも言えないでしょ、と言っていましたよ。
——そんなものなんですね。
ミゾイ:来るなら息子だけが来ればいいし、お嫁さんは自分の実家に帰ったらいい。それはお嫁さんと折り合いが悪い、ということではなくて、息子はもともと実家にいたときの部屋がまだそのままでベッドもあるから「適当に寝てね」って言えばいいけれど、お嫁さんや孫が来るとそんなわけにはいかないでしょ。互いに気をつかったり、大変だったりするから「来なくていい」と言う人は私のまわりには多いわね。
「それぞれの実家に帰ったら?」
——夫婦がそれぞれの実家に帰るというのは互いに気をつかわなくていいですね。
ミゾイ:そうですね。それにうちの長男夫婦は遠くに住んでいて共働きなので、たまの休みは家族水入らずで楽しめばいいと思うんですよ。無理に気をつかいあう姑のところに来なくても。
——そうなんですね。そんなもんなのかと気が楽になりました。互いに「お盆と正月くらいは顔を出さないと」と”忖度”しちゃっているのでしょうかね?
ミゾイ:若い人も若い人で「こうあらねばならない」と思い込みすぎているのかもしれないですね。まあ、地域にもよると思います。子供の家族が大勢で来るのが自慢で、来ないと「あそこの家はどうしたのかしら?」と近所で話題になる地域もあるでしょうから。
——面倒ですよね。
ミゾイ:だから、結婚する時点から考えたほうがいいかもしれないですね。どういう親でどういう地域なのかを…。
「〝寂しい〟のはやることがないから」
ミゾイ:うちの場合は布団の準備が大変なので、息子家族がこっちに来るときはホテルに泊まってもらっています。お嫁さんだって気が休まらないと思うのでそのほうがいいと思うんです。昼間だけ会って話すだけでいいのよね。私もツイッターとかやることがあって忙しいし(笑)。やることがあったり、自分の楽しみがあったりすれば「寂しい」とは思わないですよ。
——うちの親を見ていてもそう思います。特に母親は自分からやりたいことを探すタイプではないので事あるごとに「寂しい」と言うんですが、少し重いんですよね。
ミゾイ:やることがないのよね、きっと。楽しみが見つけられないんだと思うんですが、そちらのほうが問題だと思います。だから子どもや孫にしか興味の対象がない。きっとそれが問題なのよね。
——そうですね。だから必要以上に「親に会いに行けなくて申し訳ない」「孫の顔を見せてあげられなくて親不孝」と思う必要はないんですね。
後編では、「仕事も家事も子育てもがんばりすぎてしまっている女性たちへのメッセージ」をいただきました。お楽しみに!!
ライター:森鷹ユキ
記者・エディター。1982年生まれ。エンタメ系ニュースサイトで5年間記者を務めたのち、女性向けニュースサイトで編集者として勤務。主に女性の働き方、生き方の取材やインタビューを担当し、現在はフリーとしても活動。