赤ちゃんが泣く理由がAIによって判明!画期的な赤ちゃん泣き声解析の技術開発が進み、子育ての悩みが解決する時代へ。いまテクノロジーで育児の悩みを解決する「ベビーテック」が注目されています。ベビーテック市場に詳しい永田哲也さんに最新事情を聞きました。
育児アプリの利用率はすでに85%
ベビーテックは妊活から未就学児まで、授乳・食事、安全・見守り、知育・遊び、健康管理、記録、保育ICTなど、子育てのあらゆる場面をテクノロジーで解決しようとしています。
米国では、熱中症防止センサー付きチャイルドシート、さらにはウェアラブル端末を使った妊活や胎児健康チェック等が実用化されています。
日本では赤ちゃん本舗が一部店舗に専門コーナーを設けるなど、ベビーテックが受け入れられつつありますが、永田さんは「日本での本格的な普及はこれから」と分析します。
「育児アプリについては使用経験者や検討している人がすでに85%近くにのぼります。
いっぽうで、NHKが『2021年はベビーテック元年』と評したように、AIやセンサーを搭載したデバイスなど本格的な拡大はこれから。
今後さらなる企業の参入が見込まれ、多くの方々が使い始めるでしょう」
育児の見える化が夫婦仲をよくする
日本のベビーテックとしては、育児記録・知育・記念(写真共有)アプリ、ベビーカメラ等がすでに使われています。
「夫婦間で育児記録を共有することで、これまで互いが認識できなかった育児に関わるプロセスを補いあえるようになったという声を聞きます。
たとえば、オムツ替えの前後には新しいオムツやビニール袋を補充し、密封して捨てるなど、名もなき細かい育児プロセスがたくさんあり、ひとりでは手が回らないこともあります。
それに気づいたほうが、準備やあと片づけをする。パートナーの協力により『自分だけが大変』な育児の不平等感が減ると余裕ができて、優しい気持ちで家族と過ごせるのではないでしょうか。
アプリで育児記録を共有すれば、ミルクやうんちの時間をある程度予測できるため、安心してパートナーに預けられたという家庭も多いです」
ベビーカメラでの見守りは、ネットワーク接続やセンサーにより進化しました。
たとえば、家族の誰かが家を離れたとしても、赤ちゃんの様子を適宜確認できることで育児への関わりを保つことができます。
さらに、ベビーカメラの進化は見守り時の安心感を向上させました。
「顔にものが当たらないか、安全に寝返りをうったかなど、赤ちゃんが小さいときは親の気は休まらないものですが、ベビーカメラの導入で少しの間、仕事や家事に時間を充てることができます。
また、ママが短時間赤ちゃんからそばを離れる間、ネットワークにつなげることで遠くの親戚や友人に遠隔の見守りをお願いできます。
毛布に顔が埋まる、吐き戻しなど助けが必要なときには、見守っている人からすぐに電話などで知らせてもらうことで、『別室でオンライン会議などを行えて助かった』という体験談もあります。
一人で赤ちゃんと向き合うのではなく、ネットワークを介して信頼できる人と育児分担ができるようになりました」
課題は祖父母世代の理解促進
ベビーカメラなどの進化で負担が減ることに加え、育児記録の共有などにより周囲との育児協力をしやすくするベビーテック。
一方で、ITやテクノロジーを育児にとりいれることに問題はないのでしょうか。
「たしかに、育児の手抜きではないかとITやデジタルに抵抗を持つ方はいます。その場合は、まず使ってもらうことから始めています。
祖父母世代には、写真共有アプリで孫の成長を喜び合える体験をしてもらう。離れて暮らしていても、家族皆で孫の成長を見守っていると感じてもらえればと思います。
AIを利用した製品・サービスも増えていますが、まずは親が正しいと思える感覚や子ども自身の好き嫌いなど個性を大事にしましょう。
テクノロジーはあくまで伴走者だという意識を忘れずにつきあっていただきたいです」
ベビーテック業界として、いま最重要課題とされているのが、商品の安全性や信頼の確保。
「まだ立ち上がったばかりの分野で、ベンチャー企業も多い。そのため、信頼を得るためには、第三者からの評価が必要だと考えています。
私たちは米国で先行しているベビーテックアワードを日本でも開催し、第三者である専門家やパパママ達の目でサービス・製品を選ぶなど継続的な努力が欠かさないようにしています」
PROFILE 永田哲也さん
取材・文/岡本聡子 写真提供/株式会社パパスマイル