株式会社クラレのアンケート調査によると、2022年春の男の子の将来の夢は1位「警察官」、2位「スポーツ選手」、3位「消防・レスキュー隊」。女の子は1位「ケーキ屋・パン屋」、2位「芸能人・歌手・モデル」、3位「花屋」とのこと。子どもの頃から将来の夢が男女別で別れる理由とは?男性だからこそ抱える問題に着目した「男性学」研究の第一人者として各メディアで活躍される、田中俊之(たなか・としゆき)さんにお話を伺いました。

田中俊之さん
田中俊之さん

小さなころから「男女別になりたい職業がある」と思い込んでいる日本

── 日本においてもジェンダー教育が進んできていると思いますが、現代の子どもたちのジェンダーに関する意識も変わってきているのでしょうか。

 

田中さん:

興味深いなと思った話なのですが、さまざまな媒体が行っている「新小学校1年生がなりたい職業ランキング」という調査があります。

 

以前フィンランド大使館の方とお話しする機会があったので、その調査結果を話題にあげてみたのですが、フィンランドにはそもそもそういった調査がないそうです。

 

僕たちは何となく「男女別になりたい職業がある」と思い込んでいる国に住んでいて、そういう調査をすると男女できれいに結果が分かれますが、そういう価値観がない国なら調査することさえないということが興味深かったですね。

 

話を戻すと、これは日本の新小学校一年生の調査なので、年長さんの頃には男の子と女の子で別の夢を抱いているということです。

 

なので、ジェンダー教育が進んでいても、その年頃までには親御さんや社会が男の子と女の子それぞれに抱く期待に、ある程度影響を受けてしまっているのではないかと思います。

 

── ジェンダー教育が進んでいても、日常生活の中での会話や、何げなく見ているテレビや本などからも「男の子はこう、女の子はこう」という役割が見えてきてしまっているということでしょうか。

 

田中さん:

そうですね。お子さんに性別にとらわれず自由に物事を考えてほしいと考えた場合、年長さんくらいの時期までには何かしらのアプローチをしておかないと子どもの中で考えが凝り固まってしまうかもしれません。

 

ジェンダーを専門としている僕の息子でさえも「女は戦わない」みたいなことを言うことがあります。「プリキュアは戦うし、今は女の子の仮面ライダーもいるよ」と答えたのですが、「でも男の方が女より強いよ」と返ってきたりなど、根深く難しい問題だと感じました。

 

ただ、息子は可愛いものも好きなので「可愛いものもかっこいいものも好きだと、2倍得だよね」と話したりなど、そういう気になる会話があった際に、ちゃんと子どもと話すようにしています。

田中俊之さん
田中俊之さん