参考書を探す親子

わが子が「勉強嫌い」にならないために、親ができることはあるのでしょうか?塾講師時代にさまざまな生徒と関わってきた教育YouTuber葉一さんによると、親は自己肯定感を高めるサポートをしてあげることが大切、と言います。

 

親が子どもに言ってはいけないこと

ノートは薄いタイプを使うといい理由

—— 教育の第一線で活動されている葉一さんは、今の学生をどのように感じていますか?

 

葉一さん:

今の学生だからという話ではないかもしれませんが、やはり自己肯定感の低さ(自分のことを嫌いになる・自分の存在価値を認められない感情)は強く感じます。

 

塾講師時代に、生徒に自分たちの長所と短所を書かせたことがあるのですが、短所はスラスラ出てくるのに対して、長所はよくて1つ、という子が非常に多かったのです。

 

その短所には、「記憶力が悪い」「集中力がない」などもあります。

 

勉強ができないことが、自己肯定感の低さにつながっていると感じていました。

 

いざ自宅学習してみようとしても、どのやり方で勉強すればいいのか、自信が持てない子が多いです。

 

だからと言って、親が子どもの歩む方向性を決めてしまうと自主性が育ちにくくなってしまいます。親は選択肢を与えるだけにとどめて、子どもに決めさせる勇気も必要です。

 

—— 具体的に、どんなことを子どもに決めてもらったらいいでしょうか?

 

葉一さん:

参考書などは、親がよさそうなものを買い与えたくなる気持ちもわかります。

 

けれど、子ども自身が「これで勉強したい」と思えるものを書店で選ばせてあげましょう。自分で選んだ参考書のほうが愛着が湧きやすいです。

 

また、自分が使うノートやペンなども、本人に選ばせてみるといいですね。

 

ちなみに学校や授業で使うノートのほかに、自宅学習で使う「自習ノート」は、教科ごとに用意するのでなく、すべての教科を1冊のノートにまとめるのもありです。

 

特に小学生のうちは、自習ノートを使いきる経験がなかなかできないので、意図的にページ数の少ないノートにする方法もおすすめしていました。

 

そうすると、最後まで使いきることができるので達成感と自信がつき、自己肯定感にもつながります。

 

その際はぜひ、たくさん褒めてあげてください。親の褒め言葉は子どもの自己肯定感に直結します。  

勉強にやる気がない子どもへの対処法

—— この春、小学生になった娘がいます。折り紙やお絵描きは大好きですが、お手紙をお友達に渡すなどのやり取りが見られず、文字を書くことへの興味がないようで、学習に対する好奇心が弱い気がするのですが…。

 

葉一さん:

勉強って、最初から楽しいと思っている子どもはいないです。

 

その前段階として、知的好奇心や親への承認欲求が大きく関わっています。知らないことがわかって楽しい、親から褒められて嬉しいという経験が勉強の楽しさにつながるんです。

 

だから、好奇心や承認欲求の対象が、勉強になったときでもスッと頭に入りやすくなります。

 

もし折り紙好きなら、わからないところを手伝ったりする、できたものを褒めてあげるなど、親が一緒に関わってみてください。

 

できないことができた、という喜びを分かち合って、承認欲求を満たしてあげましょう。

 

今から足し算など計算を教えるのもいいですが、どうやったら楽しんでくれるかを考えて、一緒に遊びながら数字を覚えるなどすると、勉強に対するハードルは低くなりますので、“一緒に楽しみながら”をキーワードにやってみてください。 

親が子どもに「言ってはいけないNGワード」とは?

—— 親から褒められる経験が、自己肯定感を高める要素になるのですね。逆に自己肯定感を下げてしまうタブーな行動はありますか?

 

葉一さん:

いろいろとありますが、塾講師時代に親御さんにお願いしていたNGワードが、「ママ(パパ)の子だから、あなたが勉強できなくてもしょうがないね」です。

 

これは、子どもが勉強で失敗したときに、落ち込まないようフォローしているのでしょうが、それどころか、子どもも親の言葉に引っ張られて自分ができないのを正当化してしまいます。

 

親の自己肯定感が低いと子どもにも影響するといわれますが、こういったネガティブな考え方の連鎖は避けなければなりません。

 

自分(親)と比べるのはもちろん、兄弟姉妹と比べたり、他の子と比べてもいいことはありません。 

反抗期は「近寄りすぎず離れすぎず」の距離感で

—— 反抗期真っただ中の子どもに自己肯定感を高めるサポートが上手にできるのか、ちょっぴり不安もあります。

 

葉一さん:

反抗期の子どもって難しいですよね。意思疎通が取れているのか分からないリアクションなどを見ていると迷うこともあるかと思いますが、親の立ち位置としては、「近寄らず、離れすぎず」のスタンスが大切です。

 

こまかなことですが、例えば受験勉強を頑張る子どもに対して、晩ご飯を何時頃食べるかは、先に家族で共有したほうがいいですね。

 

親の立場からすると、勉強の邪魔になるので声をかけないほうがいいのかな?と思いがちですが、先に夕食の時間を共有しておくと、子どもは勉強の計画を立てやすくなります。

 

こんな感じで、直接でなくても陰ながらそっと見守って、応援している姿勢を見せておくと、子どもも、「勉強=一人ぼっちで孤独なもの」にならずに済みます。

 

そんな親の姿を子どもはしっかり見ています。配慮してくれることに対して、子どもから言葉で直接伝えることはなくても、実は嬉しく思っていて、心の底では感謝している。だからこそ、子どもは、前向きに勉強に取り組めるようになるのです。

 

PROFILE 葉一さん

教育YouTuber。2児の父。東京学芸大学卒業。2012年YouTubeチャンネル「とある男が授業をしてみた」の運営を開始。動画累計再生回数は5億回以上。テレビ含めメディアにも出演多数。著書に『塾へ行かなくても成績が超アップ! 自宅学習の強化書』(フォレスト出版)

取材・文/桐生奈奈子