「もっと勉強しなさい!」。聞くだけで耳が痛くなりそうですが、「ひたすら長くやる」勉強法そのものが実は間違っているかも?今回は、教育YouTuber葉一さんに「勉強量に対する考え方」についてお聞きしました。
何時間じゃなくて、何ページ進んだかが大事
—— 昔は、「1時間勉強しなさい」なんて言われながら、勉強を“させられていた”記憶がありますが、勉強時間と勉強の成果はつながるのでしょうか?
葉一さん:
多くの子どもを見てきて、時間で勉強するクセがつくと、伸びにくくなる傾向があるなと感じています。
子どもから「1時間勉強したから、遊んでいいでしょ?」と聞いてきたり、親からも「せめてゲームする前に30分勉強しなさい!」と言ってしまうことってよくあると思うんです。
けれど、だらだらと勉強していても1時間は経過するので…。それよりも、どれくらいの量を勉強したかが大事だと思います。
机に座ったときに、時間ではなくページ数などの量を目標にして、勉強に取り組むスタンスが必要です。
学習内容の決定権は子どもが持つべき
—— たしかに。勉強してもしなくても、机に座っているだけで勉強している“風”に見えますね。“量”で勉強するコツはありますか?
葉一さん:
そのときに大事なのは、何の勉強をするのか自分で決めることです。決めたことをひとりで最後までやりきる経験は、子どもの自信につながります。
勉強内容に関して、親が勉強する範囲を決めることがあると思います。そこをグッと我慢して、子どもに勉強内容を決めさせましょう。
たとえば、「算数のプリントを2枚やる」と子どもが言ったら、「簡単な2枚と難しい2枚、どっちをやる?」といった感じで、親は相談にのってあげる程度にするんです。
選ばせてあげることで、子どもにとって受け身な姿勢でなく、主体的に勉強に関わっていこうという意識が芽生えます。
—— 親任せではなく、自分で決めたことなら、やり遂げたくなりますよね。ところで勉強の量は少なくてもいいんでしょうか?
葉一さん:
親が求める勉強量と、子ども自身が考える勉強量が違うときもありますよね。
子どもが設定する勉強量が親の認識とズレていたとしても、勉強量は子どもが自分で決めたほうを優先してあげてください。
なぜなら、子どもにもその日の調子があるからです。例えば、学校で嫌なことがあったり、帰宅後に親に叱られたりなど、子どもなりの事情があります。
「1ページやったら休憩する」というふうに、時間でなく、量で勉強をしていくと集中力のコントロールができるようになってきます。
“自分の機嫌は、自分でとる”じゃないんですけど、今日の自分が「この程度ならできそう」というところまで決めてやりきることが大事ですね。
「“100点とった”からほめる」は間違い
—— 自主性を重んじながら、親がサポートできることはありますか?
葉一さん:
たまに、あれもこれも勉強したい!と意欲的な子どもがいますが、量で勉強する経験がないと自分の勉強量に対するペース配分ができないことがあります。
教師や大人は量が多すぎると感じる場合、アドバイスしてあげて最終的には、子どもに決めさせるのがいいです。
—— 問題集をめくると、たまに解かずに飛ばされている部分があり、気になるのですが…。
葉一さん:
その子の能力にもよりますが、そもそも全員が問題集をまんべんなくやらなければいけないわけではないです。
基礎固めが必要なら今は基礎問題の定着が必須であり、そこで能力以上の難しい問題に取り組めば、高すぎる壁にやる気が削がれてしまいます。
それなら、基礎で間違えないようにキッチリ勉強するほうが効率的です。
—— 全部やらなくていいんですね。気持ちが少しラクになります。
葉一さん:
子どものレベルに合わせて、できることを考えるのが大事です。親は、どこまでわかっていて、どこを間違っているのか見てあげるように声かけしてみましょう。
ちなみに、小学校低学年だと「100点を取ることがすべて」と思われがちですが、“100点じゃないとママから怒られてツラい”経験は、のちのち勉強嫌いにつながります。
点数だけでなく、今まで間違っていた漢字が書けるようになったなど、具体的な内容を褒めてみるのもおすすめです。
子どもにとっていちばん身近な存在である、親の声かけひとつで、子どものプレッシャーはかなり少なくなるのかなと感じます。
PROFILE 葉一さん
教育YouTuber。2児の父。東京学芸大学卒業。2012年YouTubeチャンネル「とある男が授業をしてみた」の運営を開始。動画累計再生回数は5億回以上。テレビ含めメディアにも出演多数。著書に『塾へ行かなくても成績が超アップ! 自宅学習の強化書』(フォレスト出版)
取材・文/桐生奈奈子