副流煙ってどのくらい飛ぶの?電子タバコって安全?喫煙者であっても、タバコについて知らないことって意外に多いもの。今回は禁煙専門医の川井治之さんに、知っておいてほしいタバコ雑学を教えていただきました。
ベランダ喫煙なら誰にも迷惑をかけないはウソ
在宅ワークが増えて、息抜きにベランダ越しで喫煙する回数が増えた人もいるのではないでしょうか。周囲に気づかってベランダで喫煙しているはずが、実は迷惑な行為ということがわかっています。
産業医科大学の大和浩教授が行った実験では、真下や隣の住民がベランダで喫煙した場合、ベランダや窓を開けた室内へ副流煙が飛んでくることが明らかに。
同教授の別の実験では、地上でタバコを吸ったときに副流煙は25m先まで広がることも分かりました。タバコから吐き出された白煙部分だけが、副流煙として影響する範囲と思っていたら大間違いなのです。
国立がん研究センターによると、受動喫煙によって肺がんや心疾患などを患って亡くなる人は、年間1万5000人にのぼるそうです。
とはいえ、タバコの煙やニオイから受動喫煙が気になっている人のなかには、トラブルを恐れて喫煙者に本音を言い出せない人がたくさんいます。タバコを吸うのであれば、周囲の人々に配慮できるといいでしょう。
加熱式タバコが必ずしも安全とは限らない理由
最近は煙が出ないというメリットから電子タバコのような新型タバコを吸う人も多いですよね。しかし、受動喫煙の被害を抑えられても、これらのタバコは健康に害がないわけではありません。
そもそも「電子タバコ」と多くの人が呼んでいるものには2種類あります。
ひとつは装置内もしくは専用カートリッジ内の液体を電気で加熱して蒸気を楽しむもので、国内ではニコチンを含まないもののみ販売されています。これが本来電子タバコといわれるものです。
もうひとつは、加熱式タバコ。これは葉タバコを加熱してその蒸気を出すためニコチンが含まれており、前述の電子タバコとは異なるものです。
加熱式タバコは煙が少ないことと、タールなどのタバコを燃やしてできるような有害物質が少ないメリットもあり、一見問題がなさそうな気がするでしょう。
ですが、加熱式タバコは有害物質が少ないからと言って、ふつうのタバコを吸った際に起こりうるがん、脳梗塞や心筋梗塞などの病気のリスクが必ずしも低くなるわけではありません。
依存して吸い続ければ、ふつうのタバコ同様に病気のリスクを高めてしまいます。
タバコは肌荒れや赤ちゃんの発育遅延に影響することも
喫煙により、妊娠するまでの受胎待ち時間が長くなる、閉経が早まって生殖期間が短くなるなど、不妊に影響を及ぼすことがわかっています。
また、妊婦がタバコを吸う場合も、赤ちゃんの発育遅延や低出生体重、「乳幼児突然死症候群(SIDS)」のリスクなど、さまざまなデメリットがあります。
健康を害するのはもちろんですが、美容面でも影響があります。タバコは体の老化を進めるため、顔の黒ずみや肌荒れなど引き起こすのです。
日ごろからきちんとスキンケアをしていても、タバコは体の内側から美しい肌を壊していきます。
しかも、タバコに依存しているとニコチンが脳内物質をコントロールしているため、幸福感や癒やしを感じにくくなります。
「タバコを吸うと落ち着く」「ホッとする」というのは一時的なもの。すぐに禁断症状でイライラしたり、緊張を感じたりするため、結局タバコでストレスは解消されません。
むしろ、その“負の感情”を作っているものこそが、タバコなのです。
PROFILE 川井治之さん
取材・文/廣瀬茉理