我慢や待つことが苦手なお子さんが、自分の欲求をコントロールできるようになるには、どんな言葉がけが必要なのでしょうか。今回は、おやつが我慢できない子に手を焼く親御さんに、教育家・見守る子育て研究所(R)所長の小川大介先生がアドバイスします。
【Q】おやつがほしい!我慢できる子を育てるには?
小学生の子どもに我慢させる方法を教えるにはどうしたら良いのか悩んでいます。
わが家は2日分まとめておやつを購入しています。しかし、購入した日に「明日我慢するから全部食べていい?」と子どもが言うので、子どもを信じて「食べてもいいよ」と伝えるのですが、次の日になると決まって「お腹減った!おやつ買ってきて」となります。
成長期なので、おやつが食べたくなる気持ちもわかります。一方で、親としては、おやつのルールを通して我慢することを学んで欲しいという気持ちもあります。ルールを守れて、我慢できる子どもを育てるにはどうしたら良いのでしょうか?
率直に「どんな人になってほしいか」を伝えよう
「我慢する力を育てたいけれど、どうしたらよいのかわからない」と悩む親御さんは増えていると感じます。
わが子の個性や本人の意思を大事にしてあげたいと思いつつも、「子どもの意思を実際に尊重したら欲求のまま動物的に動くようになってしまうのでは?社会的マナーが身につかないのでは?」という怖さがあるようです。
世界的にも子どもの権利を尊重する流れがありますが、 どこまで自由にさせ、どこまで強制したらよいのかわからないというのも無理はありません。
ご相談者様も、おやつの一件を機にこうした不安を感じたのではないでしょうか。もしかすると、このままでは宿題をやらない子になってしまうのではないか、将来ルールを守って社会でやっていけるだろうかというところまで考えてしまったのかもしれません。
まず大事なことは、親として「あなたにはこういう人に成長してほしい」という願いをしっかりお子さんに伝えることです。
たとえば、「おやつが欲しいので『欲しい』と言ってくるあなたはかわいいし大好きだけど」と前置きしたうえで、「誰かの幸せやみんなの平和のために、ときには自分の意見をあえて言わない選択をしたり欲求をコントロールしたりする力を持った人に育ってほしい」ということを、子どもがわかる言葉で伝えるのです。
そして、「わかってくれるかな?」と確認しましょう。その際、少々不満そうでも何とか親御さんの願いをわかろうとしてくれる場合は、おやつを今日の分と明日の分と一緒に分け、「明日の分は戸棚に入れておこう」と見せてあげるなどして、ご家庭のルールを実行していけば問題なく守れるようになっていくと思います。
衝動は数秒で消える!時間の先延ばしで我慢ができる子に
一方、全然こちらの話を受け入れる様子がなかった場合は、お子さんが自分の衝動を抑えられているイメージを持つのがまだ難しいのだと考えられます。できないことを要求するのは酷ですから、我慢する力を段階的に育ててあげる必要がありますね。待てる体力と心を鍛えるトレーニングをしてあげるとよいでしょう。
たとえば、「おやつが欲しい」と言われたら、親御さんは「わかった、15分後ね」とおやつをあげるのを引き延ばします(衝動がとても強くて15分はハードルが高いなら、最初は3分からでも)。そして、また後日「欲しい」と言われたら、「30分後ね」と少しずつ、おやつを手に入れるまでの時間を延ばしていくのです。その代わり約束は守り、時間がきたら必ずおやつを出してあげます。
脳は衝動性を瞬間的に満たすとものすごくドーパミンが出て気持ちよくなるのですが、そうなると衝動はエスカレートしがちです。しかし、「今すぐ欲しい」という衝動は数秒で消えるので、少しずつ待つ時間を延ばしていくと衝動を抑えられるようになっていきます。
重要なのは、待てた場合は「約束通り待ってくれたね」と褒めてあげること。我慢が苦しい記憶とセットになると嫌になってしまいます。「我慢した結果、約束通りに親はおやつを出してくれて褒めてくれた」という、「できた」体験や気持ちをつくってあげることが大切です。それを繰り返すと、「待てるよね」という言葉がけだけで、子どもが「うん」と言えるようになっていきます。
そういった関係性ができてくれば、少しずつ立ち止まれるようになります。さらに「30分待っている間に、宿題終わらせちゃえば?(図書館で借りてきた本を読んだら?)」などとお子さんに行動の選択肢を示してあげるのもいいですね。
こうしたトレーニングを積んでいく途中では時折、「欲しいものは欲しい、やりたいことはやりたいと言っていいんだよ。でも親としては、必要なときは待つことができる子に育ってほしい」という願いを伝え直すことも忘れずに。理解と納得を大切にすることで、親の顔色を伺うのではなく、自分で判断できる力も育ちます。
あとはご家庭のルールに沿っておやつをあげるようにしていけばいいと思います。
PROFILE 小川大介さん
取材・構成/佐藤ちひろ