コロナの完全な収束がないなか、人々は慎重になりつつ外出の機会を増やしています。これまで外出を控えて義実家にも足を運んでいなかった妻たちも、よほど遠距離でなければ顔を出す機会も増えている様子。特につらいのは「近距離の義実家」という声が聞こえてきます。

義母に食事に誘われるも私には「来なくていいわよ」

「コロナ禍でもうちは共働きで通常出勤だったため、子どもたちの世話を自宅から徒歩10分の義実家に頼りがちでした。私が義実家に子どもをピックアップに行くと、よく『ご飯食べて行けば?』と言ってくれたりも。

 

ただ、義母の味つけが子どもも私も苦手なことと、万が一の感染リスクを考えて、一緒に食事をするのだけは避けてきたんです」

 

そう話すのはナナコさん(40歳、仮名=以下同)。同い年の夫と結婚して9年。7歳と5歳の子がいます。

 

上の子が小学校に進学したこともあり、つい先日、「みんなで焼き肉でも行かない?」と義母から夫に連絡があったそう。

 

義実家には義弟一家4人も同居しており、ナナコさん一家と義両親を合わせると10人。

 

「ところが前日、義母から夫に来たメッセージには、『9人で予約したからね』と。義弟の家族の誰かが行かないのかなと思いながら、当日昼過ぎに義実家に寄ると、義母が私を手招きして、小声でこう言うんです。

 

『あなたは私たちと食事をしたくないだろうから、人数に入れなかったのよ。それに実家に帰りたがってたでしょ?たまには帰ってあげなさいよ』と、手土産を押しつけられました。

 

たしかに義実家での食事は避けていたけど、そんな嫌がらせをしなくてもいいのに。もともと私を人数に入れていなかったのはショックで

 

夫に言いつけようとしたものの、義母が監視しているようで言う機会を逸し、そのまま実家に帰る気にもなれず自宅に戻ったナナコさん。

 

義母はこれまで嫌味な態度を取ってこなかっただけに、今回の仕打ちは堪えたとナナコさんは言います。

 

「思い返せば、第2子の息子が産まれたとき、義母より私の母のほうが早く到着したので先に抱かせたんですよ。

 

義母は『うちの跡取りなのに私が後だなんて』と、すごく悔しそうに言っていたことを思い出しました。いつか仕返しを、と思っていたのかもしれませんね」

夫も無関心で夫婦関係にも悪影響が

焼肉屋の件はその晩、夫に真相を話しましたが、「そんな深い意味はないんだよ。自由な時間ができてよかったじゃん」と言われる始末。

 

自分の妻が家族の一員に入れてない事実を、夫はたいしたことではないと流したのです。それがさらにナナコさんを傷つけました。

 

「私はのけ者にされているんだよと言ったけど、『おふくろは、ナナコが実家に帰ると思っていたって言ってたよ。そういうふうにきみが言ったんじゃないの?忙しいから忘れちゃったの?』と。

 

私は物忘れが激しい高齢ではないけどね、そうかもね、私が悪いのよねとたたみかけてやりました。すると夫は『怖いなあ』と苦笑して、別の部屋へ逃げていきました」

 

小学校に上がった娘には私立の学童を利用させることに。費用はかかるけれど長時間預けることができ、義実家に預けずにすむからです。

 

4月からナナコさんも部署が変わり、会社も残業なしを目指す方針になったため、今後はあまり義実家を頼らずにすみそうです。

 

「事情を話し、『これからも何かあったらよろしくお願いします』と私は義母に挨拶しました。すると『あらそう、私も肩の荷が下りたわぁ』と言いながら睨んできました。

 

どうして嫌われているのかよくわからないんですけどね。義妹ともうまくいってない様子で、義母に原因がありそうだけど、夫も義弟もわかっていないんでしょうね」

 

義実家とは揉めたくはない、でもこのままでいいのか。ナナコさんは不安を抱えながら多忙な日常生活を送っているそうです。

文/亀山早苗 イラスト/前山三都里 ※この連載はライターの亀山早苗さんがこれまで4000件に及ぶ取材を通じて知った、夫婦や家族などの事情やエピソードを元に執筆しています。