若いときはともかく、40代ともなると夫婦の寝室を「同室」にするか「別室」にするか問題が勃発してくることが多いようです。寝る時間帯、いびき、室温など、寝室においてはさまざまな「夫婦の違い」が目につくようになるのでしょう。

40代になって気づいた睡眠の大切さ

結婚したとき、多くの夫婦が同室で寝ているのではないでしょうか。その後、子どもができると妻は子どもと一緒に寝ることが多くなるかもしれません。

 

「うちは一応、夫婦の寝室があったんですが、私は子どもが小学校に入るまでは子どもと添い寝状態。小学校に入ってから、子どもは自分の部屋で寝るようになりました。

 

それ以降、私は夫婦の寝室で寝るようになったんですが、夫のいびきがうるさくて眠れない。30代のうちはまだ耐えられたけど、今は睡眠妨害だとさえ思います(笑)」

 

そう話すのはミオさん(43歳、仮名=以下同)です。3歳年上の夫はいびきに寝言、ときには歯ぎしりと、睡眠中は「うるさいタイプ」だそう。

 

40代に入ってからは、ミオさん自身もふだんの生活で疲れやすさを覚えることがあり、熟睡できないと翌日、職場でつらくてたまらないと言います。

 

「しかも最近、夫は部署が替わって、たまに日帰り出張などがあるんです。私はさっさと寝てしまいますが、夫が夜中に帰ってくるとどうしても目が覚めてしまって

 

直接、大きな振動が伝わってくるわけではないけど、ドアの開け閉めやベッドにドタンと寝られると、気になるんですよね」

 

年齢を重ねると睡眠の重要性にも気をつけるようになる年齢です。ミオさんは夫に別室で寝ることを提案します。

 

「『夫婦は同室でなければダメだよ。別室にすると会話がなくなって亀裂が入るでしょ。会社の先輩がそれで離婚したんだよ』と、夫はかたくなに言い張るんです」

 

たしかに同室で、他愛もない会話をするのもいいけれど、今はお互いに質のいい睡眠をとるほうが優先ではないかと彼女は思っているそうです。

別室で寝るようになったら夫婦仲が良くなった

一方、別室で寝ることに成功したのは、チアキさん(43歳、仮名=以下同)です。3LDKプラス狭いサービスルームがあるマンション住まいですが、昨夏から夫とは別室で寝ています。

 

「とにかく夏のエアコンがつらくて。夫は極度の暑がりで夜も18度くらいに設定して寝るんです。私は寒いから消してしまう。すると暑くて目が覚めた夫がまたつける。

 

朝までそういうことの繰り返しで、夏になると体調を崩してしまうんです」

 

ただ、娘と息子にひと部屋ずつ与えると、残りはひと部屋しかありません。だから別室にできなかったのですが、昨年サービスルームを片づけてみたら、「ここで寝れる!」と思ったそうです。

 

サービスルームとはいっても4畳半あり、冷風機をベッドから離して置けば、チアキさんにはちょうどいい室温になりました。

 

「寒いのは耐えられないし、夏はどうしても体調を崩してしまうから、あっちで寝るねと夫に言ったら、『寂しいなあ』と言ってました」

 

しかし、室温に関しては夫もストレスがあったようで、「夏だけでも」ということに。結局、この冬もずっと別室での睡眠になったそう。

 

「もうこの年齢になると、寝るときくらいはひとりでゆっくりしたい。休日前なら寝落ちするまで本を読みたいし、スマホで動画を楽しむこともあります」

 

ひとりの快適さを知ってしまったチアキさん、この空間を手放したくないと思うように。

 

そのかわり、夫と話し合って、たまにはリビングで一緒に映画を観たり、夜更けまでおしゃべりをすることもあるそうです。

 

「寝室を別々にしたら、ふたりの時間をきちんととるようになりましたね。ひとりの時間と夫婦の時間、メリハリがついてよかったと私は思っています」

 

別室にしたからといって会話が減るわけでも、ケンカが増えるわけでもありません。ただ、慣れ親しんだ夫婦だからこそ、別室にしたらかえって新鮮な気持ちになれることもあるようです。

文/亀山早苗 イラスト/前山三都里 ※この連載はライターの亀山早苗さんがこれまで4000件に及ぶ取材を通じて知った、夫婦や家族などの事情やエピソードを元に執筆しています。