ジェンダーレスの世の中になり、「男だから」「女だから」とする古い価値観から脱却する動きが当たり前になってきています。子どもが家事を手伝える年齢になれば、男女問わず、家事などの役割を与える親も増えているようです。 

洗濯物を干す夫を見て義母は大騒ぎ

結婚して13年、12歳の娘と9歳の息子がいるフミカさん(41歳、仮名=以下同)。3歳年上の夫と結婚したときから共働きを宣言。

 

家事ができなかった夫も、今では「オレって天才かも」と言うくらい料理がうまくなりました。

 

「実家暮らしで洗濯機を回せなかった夫でした。教えるのは大変だったけど、彼は最初から抵抗はなかったみたい。

 

義母がやらせなかったんでしょう。結婚してすぐ義母がうちに来たとき、夫が洗濯物を干す姿を見るや、『何やってるの、あなたは』と大騒ぎ。それ以来、義母はうちには来なくなりましたね」

 

自宅から1時間ほどかかる夫の実家にもフミカさん家族が行くのは月に1度くらい。義母はもっと来てほしい様子。

 

ただ、子どもたちが小さいうちは連れていくのが大変で、大きくなればなったで子どもにも予定があるためです。

 

「孫の顔も見せに来ないと、義姉にはグチっているようです。でも彼女は『フミカちゃん、お母さんが何を言っても気にしなくていいから』と言ってくれています」

 

フミカさんは男でも女でも、経済力と生活力、両方あれば鬼に金棒だと思っているそうです。だから、息子にも小さいときから洗濯物を畳んだり、食器の後片づけをさせたりしてきました。

「制服はスラックスにしたい」と話す娘にも義母はピリピリ

ところが義実家では、義母は娘だけに手伝わせます。息子がやろうとすると「男の子はいいの」と座らせるのです。

 

「ふたりとも、子どもながらに不条理を感じているようです。ただ、夫も実母には言いづらいみたいで、私もこの場だけのことだからと今までは目をつむってきました」

 

ところが、来年中学生になる娘が、『私、制服はスラックスを選ぶ』と、話したとたん、義母の目がギラリと光ったといいます。

 

「『ダメよ、女の子はスカート。そう決まってるの』とすごい圧をかけたんです。娘もムキになって『どうして?私はズボンが好きなの』と言い返しました。

 

『あなたのしつけはどうなってるの?』と矛先が私に向いたので、『今は男女関係ないんですよ。着たい制服を選べるんですから』と、言ってさらに義母に火をつけてしまいました。

 

その場は夫がなんとかおさめ、あとから娘が『やっぱりスカートじゃないとダメなの?』と、不安そうに言ってきたんです」

 

選択肢は多いほうがいい、古い男女観にこだわらないほうがいいと考えるフミカさんは、「あなたの好きなほうを選べばいいの」と言い聞かせました。

 

義母世代の価値観を壊すつもりはないとフミエさんは言います。ただ、自分たちの価値観もわかって、娘たちがもっと自由な世の中を生きていけるよう応援してほしい、と彼女は願っています。

男女平等の価値観を伝えたい妻が妙案を思いつく

「夫とも話したんですが、5月に義母の誕生日があるんです。いつもは外食したり私と義姉が何か作ったりしているんですが、今年は夫と息子に作ってもらおうか、と。

 

義姉にも男の子がいるので手伝ってもらい、男だけで作ってもらったら、義母はどう思うかわかりませんが、それをきっかけに男性の家事について、少し話ができればいいなと思っています」

 

義父母はまだ70代になったばかり。「男は外、女は家に」という価値観に縛られてほしくないとフミカさんは願います。

 

義姉はシングルマザーとしてふたりの子を育児中。忙しい義姉をみても「息子にはキッチンに入ってほしくない、家事もさせたくない」のが母親の気持ちかもしれません。

 

でも、義母の思う価値観が今や誰にとっても「ステキな価値観」ではなくなっているとわかってもらいたいのです。

 

「義姉の息子も中学生ですがけっこう料理をするみたいなので、男3人で楽しんで作ってみてよと応援しています。すでに3人で献立を考えているようで楽しみです」

 

男性陣が料理を楽しむ姿を義母もわかってくれて、結果オーライになるはず、とフミカさんは自信ありげでした。

文/亀山早苗 イラスト/前山三都里 ※この連載はライターの亀山早苗さんがこれまで4000件に及ぶ取材を通じて知った、夫婦や家族などの事情やエピソードを元に執筆しています。