中高時代から一貫する思い「アナウンスメントが好き」

──「専門性」と言う言葉が出ましたが、相内さんは声のトーンや、抑揚、話し方まで、音声表現に対する強いこだわりを持たれているアナウンサーだと感じます。

 

相内さん:

音声表現は、本当に大好きです。入社してからも、5色の声色で新聞を読み、発声練習することが習慣になっていました。WBSから生まれた「Vチューバー相内ユウカ」というキャラクターも、その過程で出来上がったものです。

相内優香さん
「相内ユウカ」として社内の報道月間賞を受賞  大江麻理子キャスター(左)とWBSでコメンテーターを務める滝田洋一さん(右)

 

──発声へのこだわりが生まれた「きっかけ」があれば教えてください。

 

相内さん:

中学校3年生の時に『銀河鉄道の夜』を朗読して、放送コンテストで入賞したことがアナウンサーを目指したひとつのきっかけです。ただ、今、振り返ってみると、最初の「原体験」は、中学時代、2000年の夏に群馬県の代表として参加した「こども国会」かもしれません。

 

参議院の本会議場に登壇して、マイクを使って発言したんです。自分の思いをマイクを通して伝える、その瞬間が、すごく楽しかった。そして「自分の声を自分で聞く」という、最初の体験でもありました。以来、「発声」にハマり、中高時代は放送コンテストの全国大会に出場しました。わたし、毎日ひとりで発声練習していたんです。

相内優香さん

──ひとりで!?

 

相内さん:

はい(笑)。大会へ出場するためというのもありますが、昼休み、放課後、ずっとひとりで発声練習してました。もうただ、発声練習が好きだったんです。

 

──「好き」だからこそ続けられたんですね。

 

相内さん:

はい。こうして振り返ってみると、一生懸命、毎日毎日、放送室にひとりでこもって発声練習していた下地があるからこそ、今もがんばれるのかもしれません。

相内優香さん
モーニングサテライトの解説ニュースキャスターを務める豊島晋作さんと

毎日放送に追われて「本当に大変だな」って思う日もありますが、「アナウンスメントが好きだ」って気持ちが大前提にあるんです。

 

その純粋な「好き」と言う気持ちが、アナウンサー人生を支えてくれているような気がします。

 

──中高時代からアナウンサーになりたいという夢を持ち、その夢の舞台にいる今、中高時代の自分に伝えたいことはありますか?

 

相内さん:

夢見ることも、夢に向かって努力することも大切で、「夢を叶えてよかったよ」と伝えたいですね。

 

ただ、夢って、夢を描いている時がいちばん幸せな時だと思うんです。アナウンサーになることも大変だったし、アナウンサーになったらもっともっと大変な毎日が待っていました。

相内優香さん

それでも、夢描いた場所に立っている以上は、努力を続けたいですね。

 

今はモーニングサテライトのメインキャスターの仕事に集中しています。朝の番組なので冒頭の「おはようございます」のひと言から、みなさんに覇気が伝わるように意識しています。

相内優香さん
株はアップダウンするけれど、モーニングサテライトを見て「元気もらえるな」とか「今日も1日頑張ろうと」思ってもらえるように、ポジティブなマインドを持って伝え続けていきたいです。


──相内さんは「太陽」ですもんね。

 

相内さん:

あはは。恥ずかしいんですけれど、、そうですね。そう在りたいと思います。

相内優香さん

 

 

 

取材中、ほとんど言葉につまることなく、淀みなく答える姿は、キャスターとしてキャリアを積んできた10年以上の経験に裏打ちされるもの。テレビの画面越しに見る相内さんと変わらない「凛」としたその姿勢が印象に残りました。

 

唯一、中高時代の思い出を振り返るときは、当時を懐かしむように穏やかな表情で話してくれた相内さん。「好き」を突き詰めた先に、相内さんはこれからどんな未来を切り開くのでしょうか──? 

 

相内優香さん
PROFILE   相内優香さん

1986年、群馬県生まれ。立教大学社会学部卒業後の2008年、アナウンサーとしてテレビ東京に入社。現在は「Newsモーニングサテライト」(平日朝5時45分〜7時5分 生放送)で月〜水曜日のメインキャスターを務める。22年3月、早稲田大学大学院経営管理研究科を修了しMBA(経営学修士)を取得。モットーは「しなやかな人であれ」。 

取材・文/谷岡碧 写真提供/テレビ東京