大人が抱えやすいモヤモヤについて、臨床心理士の八木経弥さんにお話を伺いました。今回は貸したお金を返してくれないお金にルーズなママ友への対応に困っている女性の相談にお答えします。
【Q】わざと?立て替えたお金を払ってくれない
ママ友と商業施設に遊びに行き、フードコートでランチすることになりました。ママ友が「私が子どもを席で見ているから」と言うので、私がみんなのごはんを注文しに行きました。そのときに支払ったお金を「後で返すね」と言っていたのに、ひとりのママ友がいまだに返してくれません。
以前も同じようなことがありました。みんなで買ったプレゼントのお金を割り勘して私が立て替えたのですが、彼女だけが払ってくれませんでした。
単に忘れてしまっているだけなのか、忘れたふりをしているのか分かりません。同じママ友グループなので、これからも付き合っていきたいのですが、お金について言い出しづらく、モヤモヤしています。どうしたらよいでしょうか?
言いにくい気持ちは「Iメッセージ」で爽やかに伝える
「貸したお金はあげたものと思え」とはよく言いますが、貸した方はたまりませんよね。相手が忘れているのかわざとなのか…。モヤモヤした気持ちは残り続けます。
「お金返してくれる?」は、ご存じの通り、とても言いづらい言葉です。そんなときは、心理学で「爽やかな自己表現」をトレーニングするときに使われる手法、「私は」を主語にした使い方「I(アイ)メッセージ」を使うのが効果的です。例えばこんな感じです。
「お金のことって言いづらいんだけど、私は後でモヤモヤするのが嫌だから、この間のお金のこと、お願いしていい?」
このように、「お金のことは言いづらい」という共感を持たれやすい言葉と、「モヤモヤしたくない」という自分の気持ちを伝えたうえで請求すると、相手に理解してもらえる確率は高まります。
割り勘や立て替えをやめてトラブル回避
この方の場合、1度目ではないとのこと。以前も立て替えたプレゼント代を払ってくれていないということでしたから、おそらくこのママ友はお金にルーズな方なのでしょう。単に忘れているだけと信じたいですが、なかには「あいまいにできるならラッキー」と、わざと返さない人も残念ながらいます。
いずれにせよ、ルーズなタイプと分かっているなら、また同じことが起こる可能性もあります。それを踏まえたうえで、これからは同じ状況をなるべく回避したほうがいいでしょう。
例えばこれからフードコートでランチするときは、あらかじめお金を受け取ってから支払い、お釣りを返却する流れにしたほうがいいと思います。プレゼントの割り勘はやめて、別々に買いましょう。そうすれば、立て替え未払い問題も起きません。
時間やものにルーズな人にも気持ちを伝える
お金だけでなく、時間やものにルーズな人もいますよね。「あと10分、あと10分…で結局30分待たされた!」「大切な本を返してもらいたい」なんてことも。
その場合も同じようにIメッセージを使って、気持ちを爽やかに伝えられるといいですね。例えばこんな具合です。
「私はカフェで待っていたいから、これからは最初に30分くらい遅れるって教えてほしいな」
「あらかじめ遅れることを伝えてくれたら、私もゆっくり準備できるから、早めに教えてね」
「あの本また読みたくなったから、返してもらえるかな」
などときちんと伝えるといいです。そのほうが、あとのわだかまりが残りにくくなります。
「あの本を誰かに貸してたんだけど、誰に貸したか分からなくなって…」と伝えるのも嫌味にならず、おすすめです。
Iメッセージで「私の気持ち」を伝えることで、印象が和らぎます。反対に、Iメッセージを抜いて伝えると、きつい印象になることがあります。
Iメッセージを使わない場合は、例えば、
「なんで最初に30分遅刻するって連絡できないの」
「この間貸した本、早く返してよ」
こうなるとケンカになってしまいそうですね。家族間の会話でもIメッセージをぜひ使ってみてください。きっと落ち着いた状況をつくり出せるはずです。
自分がうっかり返し忘れていた立場になったら
逆の立場で「お金を払い忘れていた」「借りたものを返し忘れていた」という人は、次のように返すと相手に気持ちが伝わりやすいです。
「お金のことって言いづらかったよね?言いづらいことを言わせてしまってごめんね」
「こんな大切なことを忘れてしまっていてごめんね」
と伝えると、相手の気持ちを思いやった柔らかい伝え方ができるのではないでしょうか。
どんな人でもうっかり忘れることはあります。けれどお金のことは親しい友人間でも家族間であっても、モヤモヤするものです。人間関係を悪くしないためにも、お金のトラブルを避けるのがいちばんです。立て替えはしない、事前に集金する、の2点は鉄則です。
最近はPayPayなど電子マネーを使ってその場で送金できる方法もありますから、トラブルを避けるために精算の手段を選ぶのもおすすめです。
PROFILE 八木経弥さん
取材・文/大楽眞衣子