大人が抱えやすいモヤモヤについて、臨床心理士の八木経弥さんにお話を伺いました。今回は「家庭ごとのルールの違いについて、どう対応すればいいか」と悩む子育てママの相談にお答えします。
【Q】家族ごとに違うルールに外出先でどう対応を?
子どもの習い事の帰りなどに、ママ友と家族同士で外食することがあるのですが、家族ごとのルールの違いにいつも戸惑います。例えば食事のときはジュースを頼む、頼まない。待ち時間にスマホで動画を見せる、見せないなど。
どちらがいい悪いではなく、価値観が違う家族と場を共有する際に、他の家族がいる前でどのような振る舞いを取るのが適切なのかを知りたいです。また、「自分も!」とダダをこねて納得できない様子の子どもに対して、家庭ごとにルールがあることをどうやって説明するのがいいのでしょうか。
「よそはよそ、うちはうち」では納得できない
ほかの家族と子連れでお出掛けすると、こういう問題はよく起こりますよね。「うちはやめておくね」と断るとその場が白けてしまうので、結局モヤっとした気持ちを抱えたまま、相手のペースに合わせてしまうことも多いのではないでしょうか。
「よそはよそ、うちはうち」とは、昔からよく言われるセリフではありますが、これを貫くことができればラクです。でも現実はなかなか難しいもの。友達がジュースを頼んで自分は頼んでもらえないとなると、多くの子はダダをこねます。
料理が運ばれてくるまで友達は親のスマホでゲームをしているのに、自分は触わらせてもらえないとなると「なんで!」と騒ぐのではないでしょうか。
大切なのは、そうなる前に子どもが納得することです。
「よそはよそ」だけでは子どもは納得できません。「うちはうち」のルールがあって、それには親としての考えや家庭の状況などに基づいたきちんとした「理由」があるはずです。
頭ごなしに「よそは良くても、うちはダメなの!」と伝えるのではなく、今一度、子どもの目線に立って、親の考えをきちんと伝える努力をすることが大切だと思います。
事前にわが家のルールと理由を伝えておく
子どもがある程度聞く耳を持った年齢以上という前提にはなりますが、子どもに前もってわが家のルールを伝えておくといいでしょう。例えばスマホについては、こんなふうに伝えるといいかと思います。
「うちではごはんのときはスマホを見ないってルールがあるよね。その理由はね、お父さんお母さんはあなたに人とお話しすることを楽しんでもらいたいからなんだよ」
ごはんのときのジュース問題もありがちな話です。普段の家族の時間に、こんなふうに伝えておくといいかもしれません。
「うちではごはんのときにどうしてジュースを飲まないか分かる?ジュースをたくさん飲んでしまうと、栄養いっぱいのおいしいごはんを食べる前に、お腹いっぱいになっちゃうからだよ」
「今度お友達とお出掛けするけど、ごはんのときにジュース飲むかもしれないから、そのときだけ特別に頼んでもいいよ。でも、先にジュースを飲むとお腹いっぱいになっちゃうから、食べ終わってから注文する?」
などです。腹ペコな状況でこれから注文する場面で伝えるより、事前に落ち着いた状況で話すことで、子どもも納得してくれることが多いでしょう。
「本当はうちでは禁止してることなのに…」と相手のペースに流されるままに行動していると、子どもは「うちもやっていいんだ!」と勘違いしてしまい、あとが面倒なことになるかもしれません。振り回された子どももかわいそうです。ある程度の年齢になると理解力もついてきますから、この方法をぜひ試してみてください。
「どっちがいい?」で考える力を育む
とはいえ、前もって予測できない場合も起こります。例えば、行き当たりばったりでUFOキャッチャーをやることになった場合などです。そんなときは、選択肢を与えて、「考える力」をつける機会にするのも良いでしょう。
「この100円を使って取れるか分からないゲームに使うこともできるけど、100円で駄菓子を買うこともできるよ。同じ100円だけど、どっちに使いたい?」
目線を合わせて親の気持ちを伝えつつ、子ども自身に選択させることで考える力がつきますし、親のモヤモヤもラクになります。
わが家のルールについて改めて理由を考える
家族ごとにさまざまなルールがありますが、なぜそのルールがあるのかについては、あまり考える機会はないかもしれません。質問者さんのような場面に遭遇すると、改めて、わが家のルールについて考える機会にもなるかと思います。
例えば「YouTubeは見せない」というルールがあったとします。なぜ見せたくないのでしょうか。自分に問いかけてみてください。「ダメなものはダメ」では子どもだって納得できません。考え直すことで、「ルールに固執していただけだった」という気づきにつながることも。場合によってはルールが変更できるかもしれませんね。自分の考えを整理することで、相手(子ども)に想いを伝えやすくなりますし、子どもの納得感につながるように思います。
PROFILE 八木経弥さん
取材・文/大楽眞衣子