ポジティブな要素がたくさんある、推し活。とはいえ、いざ「推し活したい〜」となっても、「私にとっての推しって誰?どこにいるの…?」と、肝心な推しがなかなか見つからないという場合もあります。そこで、これまでの人生、ほぼ途切れずに推しがいて「推しのミルフィーユ」の構築を更新中という、犬山紙子さんに、推しの見つけ方について聞きました(全2回の2回目)。

推しが見つからない人は友人の後を追う

—— 推しが欲しいけどなかなかできない…そんな人はどうしたらいいですか?

 

犬山さん:

推しは探して見つけるというより、「推しは落ちるもの」だと思うんですよね。恋と一緒。ただ、落ちやすい状況って、多分、人によっていろいろあると思うんです。完全に心閉じてたら、それこそ、落ちるものも落ちないと思うんですね。

 

「この人好きかも」「このキャラ好きかも」とふと思ったときに、「でもそんなの恥ずかしい」ってフタをする気持ちがあるんだったら、ぜひそれはフタをしないで欲しいです。

 

「2次元にこの年でハマるなんて…」みたいなことを思う人がいるとしたら、全然いいんじゃない?と言いたい(笑)。

誰かを推すことに、年齢は関係ないんじゃないかな

犬山さん:

あとは「推しに落ちやすい」状況を作るのには、友人が推しに狂っている姿を見るのがいいかも(笑)。「めっちゃ幸せそうやな」と思いますから。「1個画像がアップされただけで、三日三晩この人は語り続けられるのか」って(笑)。

 

自分の「好きかも」に対してはオープンでいて、それを掘ってみる。それで他の人の解釈をチェックしたりしているうちに、「バチコーン」と沼落ちする瞬間がくるかもしれないです!

 

—— 作ろうと思ってもできない場合は?

 

犬山さん:

無理して推しを作ろうと思って動いててもできないときはできないから、できたときに心を開くというのでいいと思います。もちろん、推し自体が必要ない方もいると思うんです。そういう人って、別の趣味があったりしますし、そもそも自分が凪の状態が好きなんですっていう人もいるだろうし。でも少しでも、まわりの友人とか見て「推しにハマってるのってこんな幸せそうなんだ」と思いつつ、情報に対して心をオープンにしておく、フットワークを軽くしておくといいかもしれません。

ファッションも大好き!な犬山さん

 

—— 小さい子どもを育てていると、自分の時間てほぼないですが…。推し活どころか、スマホを見る時間もなかったり。それでも推しはやっぱりいたほうがいいですか?

 

犬山さん:

娘がまだ小さかったころに、ヤバイくらいに推しにハマっていたときを思い返してみると、漢字一文字で表すと「幸」なんですよね(笑)。強烈にハマって好きと思うのは、やっぱりなんか本当に特別なことだと思います。

 

最近は推し活がブームですし、みんな推しがいて、推しがいるのが当たり前…と思うかもしれませんが、そうではなく、推しがいることって本当にすごいこと、尊いことなんですよ。なかなかそんなハマれる人とかキャラクターっていないですから。

 

だから、それは、すごい幸せチャンス!もちろん、時間がない中で推しに時間を使っていてストレスを感じるようなら、やめればいいですから。それも自分の好きなようにできちゃう、それが推し活のいいところだと思います。

「推しは自分」自分を映し出す鏡でもある!

—— 推しがいると、ポジティブに暮らせそうですね。

 

犬山さん:

そうですね。ただ、推しとは、偶像。実際に会って話したり友達になるとかではなく、自分の心の中である程度理想像をおしつけた存在でもあるんですよだからそれを推し本人に押し付けるのは絶対ダメだと思っています。そして偶像を推すって結局、自分との対話でもあると思うんです。

 

かつて推しに対して激しく妄想してたとき、「私ってなんでこういう悲しい恋愛ばかりの方に持っていく妄想するんだろう…」みたいなところから、思春期の自分のあり方だとだったりとか、あの行動がここに繋がってるのかなみたいなことで、 結構自分の深い内面と向き合うことができたり。そこからさらに何か考えたりとか、自分の奥底を知れたり、推し活は自分の内面を再確認する行為でもあると思います。

 

—— 仕事、家事、子育て…と流れる日々の中で「推しを思う」って、ちょっと違う要素の感覚ですよね

 

犬山さん:

そうですね。普段の生活って「自分とは何か」というよりは、周りとのコミュニケーションになってきますけど、推し活は「自分の中に深く入る行為」だと思います。そこまで自分に自分のことを考える時間って、あまりないじゃないですか。

 

推しは、自分の内面を写す鏡でもあると思います。推しを通して思うことを自分なりに考えてみると、自分の心の謎がとけることも多い。結局、自分を愛するために推しを愛してるんだな、とも思うんです。

推しに対しての気持ちを分析すると、自分のことがよく見えてきたりする

 

—— 推し活でマイナス面ってあるんでしょうか

 

犬山さん:

強いていうなら、お金の使いかたですね。そのときそのときで、推し活にいくら払えるかっていうのは冷静に見極めるべきです。推しに対してお金を使っていない私が好きっていってもいいんだろうか?なんて、絶対に思わなくていいと思います。

 

—— 自分の生活や気分のペースに合わせて楽しむということですよね?

 

犬山さん:

はい!ファンに上下はなくて、みんな平等です!

 

—— 最後に…犬山さんにとって推しとは?

 

犬山さん:

聖域です。誰にも土足で踏み込まれない、心の中にある聖域なんです。その聖域で疲れた心が癒されることが多くあります。

「推しは、私の毎日の活力です!」と、熱量高く話す犬山さん

 

そして、生きる理由でもあります。推しがいることは生きる喜び!推しは、そんな存在です。

 

PROFILE 犬山紙子さん

1981年生まれ。コラムニスト、イラストエッセイスト。『負け美女』(マガジンハウス刊)でデビュー。2017年1月に第一子となる娘を出産し一児の母になった現在も、多くの雑誌での執筆活動や、テレビやラジオのコメンテーターとして幅広く活躍。お酒とボードゲームと洋服が大好き。今推しているのは、ソーシャルゲーム『魔法使いの約束』のキャラクターだそう。

取材・文/松崎愛香 写真/田尻陽子