先月23日から営業を再開した上野動物園。去年6月に生まれた双子のジャイアントパンダの観覧は事前抽選となっています。1日あたりの当選者は最大2800人からスタートし、今月5日からは4400人に増やしたものの、4月10日の抽選倍率は24倍になるなどその人気ぶりが伺えます。上野動物園の福田豊園長に聞く、双子パンダの現在の様子は。
「体重20キロ超え」双子のジャイアントパンダは今
──双子のシャオシャオ(オス)とレイレイ(メス)はどのように成長していますか。
福田園長:
2頭とも成長期に見られる行動を取り始めています。
今はちょうど木に登りたい時期で、それぞれの個性や好みが少しずつ出てきました。同じ木に登る場合も、別々の木に登る場合もあるのですが、それぞれ好きな場所があり、寝るときはここがいい、というような行動も見られますね。
性格というほどのはっきりしたものはまだないかもしれません。
現時点で性別の差はないのですが、いずれ体重の差が出てきてオスのシャオシャオの方が重くなってくると思います。
──上野動物園では初めて双子のジャイアントパンダが誕生したわけですが、飼育の難しさはありませんでしたか。
福田園長:
母親のシンシンはシャンシャン(2017年6月生まれ)の子育て経験があったので、私共も落ちついて見守ることができました。ただ、3頭を同室にするときに母親のシンシンがどういう反応をするかが気になっていました。
1頭しか子育てをしないジャイアントパンダが多いので、数日おきに入れ替えながら子どもを1頭ずつ母親と同室にして、もう1頭は飼育係がミルクを与え、保育器で育ててきました。
ですが、母親としてシンシンは2頭とも認識していまして、どちらか1頭しか面倒を見ないということもなく、2頭に授乳をしている様子も確認することもでき安心しました。
──シンシンは母親として双子にどう接しているのですか。
福田園長:
母親のシンシンは、2頭をよく見て見守っている感じです。必要以上に干渉はしないですね。双子はよく木から転げ落ちたり、戯れあったりしているんですが、危険がなければ間に割って入ることはないです。
でも寝るときは3頭で寄り添っていることもありまして、シンシンは母親として見守るということを主にしているかと思います。親子の関係性というのはすごくうまくいっていると思いますよ。
──2頭は現在、体重が20キロを超えているそうですが、双子のシャオシャオとレイレイが子どものうちに見たい方も多いと思います。いつ頃からジャイアントパンダは大人になるのでしょうか。
福田園長:
ジャイアントパンダの場合は4歳半から5歳くらいに性成熟に達する時期になりますが、個体差もあります。去年6月に生まれたシャオシャオとレイレイはまだ授乳中なのですが、1歳半〜2歳頃には離乳して、日本の竹や笹を食べるようになります。
ジャイアントパンダの主食は竹や笹が9割を占めていて、副食としてりんごやにんじん、パンダ団子という、とうもろこしの粉を入れて丸めたものを、トレーニングのご褒美だったり、運動場に仕掛けてゲームをしたりする際にあげています。
大人になっても、ジャイアントパンダは大の字になって寝ている姿など、とても無垢な様子を見ることができますが、双子の2頭についてはしばらく無邪気な子どもの姿を楽しんでいただけると思います。
──営業を再開するにあたってジャイアントパンダの観覧をインターネットでの事前抽選にし、人数を制限している理由を教えてください。
福田園長:
多くの皆さんがジャイアントパンダをご覧になりたいと思うので、とても混んでしまいます。感染予防の観点と、混雑回避のためにお客様の人数をコントロールさせてもらっています。
それと、人が観覧することは動物への刺激になることもあります。特に屋外施設は動物にも人の声などが聞こえますし、手を振ったり、写真を撮られたりする方もいますので動物がストレスを感じたときに対処できるように考えた上での決断です。
雨の場合、ジャイアントパンダは室内展示場でご観覧いただきますので、なるべく密にならない状況を作っていくために抽選にさせていただいております。
今年はジャイアントパンダ来日50周年 変わらぬ人気のワケは
──1972年の日中国交正常化の記念にジャイアントパンダが中国から贈られてから今秋で50年を迎えるそうですね。
福田園長:
カンカンとランランが上野動物園に来た当時、日本人でジャイアントパンダを見たことのある方はほとんどいらっしゃらなくて、動物園としてもどんな動物かあまりわからないまま受け入れが進んだと伺いました。
中国側からスタッフも一緒に同行してきまして、色々と教わりながら飼育したそうです。
幸い、2頭は日本の竹や笹もよく食べてくれたので、健康を維持することができました。その後も色々と工夫を加えながらではありますが、今でも上野動物園でのジャイアントパンダの飼育は中国で行われている方法とほぼ同じです。
当時、実際にご覧になったお客様はきっと驚いたと思うんです。白黒の2色の動物で、食べるものは笹や竹の部類で、不思議な動物だったと思います。
熊のようだけれどほんわりしていて仕草が可愛らしく、なおかつ無邪気で、人を惹きつける魅力があると思います。
日本人がジャイアントパンダに魅了されて人気が出たわけですが、それは50年経った今でも変わらないと思っています。
上野動物園では途中3年ほど途絶えたことがあるのですが、現在までジャイアントパンダの飼育が続いていて、そのなかで5頭の出産がありました。子どもが生まれるとまた可愛いですよね。上野動物園ではジャイアントパンダを「フラッグシップ種」(保護活動のシンボルとなる種)と呼んでいますが、特別な存在だと思っています。
取材・文/内橋明日香 写真・動画提供/(公財)東京動物園協会