人気の背景にある“やさしさ”と“ユーモア”
それでも、運用から1年経ったあるとき、投稿のマンネリ化に悩み、Twitterをやる意義について向き合う日々があったといいます。
「もちろん会社のPRとしての役割はあるのですが、社会貢献としてブロッコリーの情報発信をしていきたい、と強く思ったのが転機かもしれません。
運用当初は、農業のアカウントですから、ツイートに寄せられるのは、農業関係の質問だろうと思っていたんです。
でも、意外と多く寄せられたのは、ブロッコリーの選び方や食べ方についての悩みでした。
図書館で研究論文などの資料を調べて答えるということを重ねるうちに、知識が身についていきました」
料理に関しても、未経験ながらトライ&エラーを繰り返し、唐揚げの調理をヒントに「麺つゆ漬け揚げ」のレシピが誕生。
Twitterのいいねは、なんと13万!過去最高の大きな反響を巻き起こしました。
その後もユニークなGIF画像をはじめ、ブロッコリーにはまったく関係のない〇〇の日に絡めたやや強引な挨拶や、「オッケーブロッコリー」なるブロッコリー語を巧みに操る発信も名物に。
プロフェッショナルな世界観づくりによって、フォロワー数は6.5万人となり、「ブロッコリーの人」としての地位を不動のものにしていきました。
「投稿の際に意識しているのは、正解を伝えるのではなく、あくまで選択肢を提案するというスタイルです。
ブロッコリーのお役立ち情報の発信はもちろんですが、コロナ禍という激動の時代、なかには憂うつな気分の方もいるかもしれません。
そんな皆さんに笑顔を届けられるように、ゆるく楽しめるという点も大切にしています」
取材終了時、「オッケーブロッコリー!」とお茶目に締めてくれた広報担当者。
ブロッコリーへの熱い思いに加えて、Twitterの投稿からも滲み出るやさしさとユーモアが、人々を魅了する理由なのかもしれません。
PROFILE 安井ファームさん
石川県白山市の農業法人。同県におけるブロッコリー作付面積の約3割を1社単独でシェアしている。令和元年「内閣総理大臣賞」を受賞。Twitterの公式アカウントのフォロワーは6.5万人。著書『日本一バズる農家の健康ブロッコリーレシピ』(KADOKAWA刊)が話題。
取材・文/石橋沙織 画像提供/安井ファーム