実母と同居し介護が身近に

昨年8月から76歳の母親と同居を始めたななさん(46歳)。家事の分担ができ、4歳の息子の育児に関わってもらう一方で、親の老いを身近に感じるように。大人になって再び一緒に暮らし始め、改めて感じる母親への思い、今後の課題となる介護について聞きました。

母との同居で育児や家事の視点が変わった

夫(37歳)が5年間の海外赴任に行っている間、実母との同居生活を始めたななさん。家事の分担もでき、4歳の息子との3人暮らしは快適だといいます。

 

スムーズな生活を送れているのは、ななさん自身が年齢を重ね、経験を積んだおかげでもあると考えています。

 

「もっと早くから同居していたら、親に甘えて当たり前と思っていたかもしれません。でも、母もすでに76歳。

 

サポートは期待しすぎず、手伝ってくれたらラッキーくらいに思っています。私も自分の家庭を持ち、改めて親のありがたさを感じるように。おかげでいい関係が築けています」

 

大人になってから再び一緒に暮らし始めたことで、刺激を受ける部分もあります。

 

実母は食事にはケチケチせずにお金をかけます。一緒に夕食などの買い物に行くと、安いものを選びがちのななさんに対し、実母は多少値段が張ってもおいしいものを選び、旬の食材を取り入れるなど対照的です。

 

「節約もするけれど、お金をかけるべきところはかけるメリハリのつけ方が上手だなと思います。母は友達とも和気あいあいと楽しみ、上手に人生を楽しむタイプ。

 

私は気が乗らないとなかなか行動できません。いくつになってもアクティブなところなど、母には見習いたい部分が多いです」

 

3世代同居は、息子にとってもいい影響があると感じています。

 

夫の海外赴任で息子と2人で生活していたころは、わがままを許していたつもりはないものの、無意識のうちに息子に合わせている部分がありました。

 

いまは実母の存在が緩衝材となり、ダメなものはダメとケジメをつけられるように。

 

「パパとママ以外の家族と暮らす経験は、息子にとっては初めて。楽しさと同時に、生活習慣の違いなど、面倒に感じる部分もあるかもしれません。

 

それでも、おばあちゃんとの生活でお年寄りへの思いやりや、みんなで協力して暮らす心を学ぶ機会になるのではないかと思います」

「手の力が弱くなって」同居で知った親の老い

一緒に暮らすことで、実母の老いを実感する場面も増えました。

 

以前は何事にもきめ細やかだったのが、目が見えづらくなり、食器の洗い残しがあったり、手の力が弱くなり、ビンのふたを開けられなくなったりするときも。

 

「私が今より若かったら、もっとちゃんとして!など目くじらを立てていたかもしれません。でも、私自身もすでに46歳。

 

だんだん体力の低下を感じる年齢にさしかかってきました。だから、母の老いも、そういうものだと受け入れていますね」

 

今年のお正月には、階段の段数を見誤って転んだ実母が腰の骨を折るトラブルも。高齢者や家族の支援を行う包括支援センターに相談したところ、要介護認定を受けることをすすめられました。

 

介護が必要な状態だと認定されたら、介護保険サービスの利用も可能になります。まだ認定の結果は出ていませんが、今のところは電動ベッドがあれば自立できて元気。それほど大ごとにはなっていません。

 

「今回の骨折により、当初は私もストレスを抱えて息子にイライラしてしまうときもありました。3世代同居は気負いすぎず、おおらかな気持ちでいることが、家族のためになるんだとも実感しました」

 

介護と育児の両立と、ななさんは上手に向き合っています。日々の生活をブログに書くなど、新しい経験として楽しんでいます。

 

「介護については、あまり思いつめないようにしています。いずれは誰もが通る道という感覚ですね。

 

全部をひとりで抱えこむのではなく、しんどいときは誰かに助けを求めることが大切だと思います。

 

いざとなったら、頼れるコミュニティや公的サービスがあると考えると安心感があります。先々の心配ばかりするのではなく、本当に困ったら誰かに相談しようと、気持ちの余裕を持つことを意識しています」

 

別々に暮らしているときから、母の年相応の物忘れやうっかりが気になっていたななさん。同居のおかげで、実母の状況を把握できたことは安心感にもつながったそうです。

親が80代になったら?家族とともに向き合いたい

改めて親のありがたみを感じ、親の老いと向き合うきっかけとなった同居生活。とはいえ、実母との同居生活は夫が海外赴任に行っている5年間の予定。その後どうするかは、まだ決めていません。

 

「夫の帰国後も一緒に暮らすのは、夫も実母も気をつかいそうなので、現在は考えていません。でも、夫が日本に戻る頃、母は80代。

 

きっと本格的な介護も必要でしょう。母自身も今回の骨折をきっかけに、数年後、改めてひとり暮らしできるか不安になったようです」

 

夫が日本に戻ったあとも、状況次第では同居継続となる可能性も。今後、介護が本格化するようであれば、ななさんが面倒を見ようと思っています。

 

もし経済的・心理的負担が大きいようであれば、兄と相談して費用負担のお願いや、施設入所も検討しています。

 

ベストな方法を選べるよう、家族できちんと話し合いたいと考えるななさん。そのときまで、母との生活を楽しみ、協力し合って暮らす毎日です。

ななさん(ブログ https://ameblo.jp/smile888happy/)

文/齋田多恵
※上記は、ななさん個人の経験談・感想です。