つらそうな女性

4月に入ってから気分の落ち込みや動悸、胃痛など不調が続く状況は「4月病」などと呼ばれています。ただ、このような不調は4月だけではありません。「実は、1年じゅう注意が必要です」と早稲田メンタルクリニックの院長・益田裕介さんは警鐘を鳴らします。

「不調の波」はいつ?年間のスケジュールを知ろう

4月病とは、新しい変化に慣れずにストレスを抱えて不調が現れること。4月は仕事や家庭の環境が変わることも多く、心身ともに負荷がかかり体調を崩す人もいます。医学的には、心の病気「適応障害」を指します。

 

そもそも、適応障害とは環境の変化だけではなく、人間関係や働き過ぎなど、あらゆるストレスが原因です。

 

そのため、4月病のような不調には1年を通して気をつけなければなりません。適応障害に悩む当院の患者さんには、1年のうちに何回か不調のピークや相談に来られる方が多い時期があります。

 

以下に、「働き過ぎ」の方を対象に不調に気をつけたい時期を挙げていきます。

メンタル不調に陥りやすい年間の周期
益田先生への取材を元に作成したメンタル不調のバイオリズム

 

1~2月は比較的忙しくない環境の方が多く、患者さんの相談は少ないです。しかし、年度の切り替わりの3~4月になると、年始から溜まった疲れのピークを迎えます。

 

そして、5月のゴールデンウィークでいったん体が休まり、疲れも落ち着くのですが、6~7月にはまた疲労が蓄積し体調を崩す人が増えます。特に、7月は調子が悪いと訴えて来る患者さんが多いです。

 

8〜9月は夏休みやシルバーウィークで休息が取れるので不調が落ち着くようですが、10~11月に再び体調を崩してしまう患者さんもいます。

 

12月は年末で仕事納めや帰省など、やることが増えてしんどいと感じる方もいます。 そのまま年末の休暇で少しラクになり、また年始に働き始めます。これが1年間のイメージです。

テレワーク中の人はより心身の疲れに注意したい

「4月病」に加えて「5月病」「6月病」という言葉がありますが、これらはすべて同じ適応障害。しかし、実際体調を崩してしまう人が多いのは7月です。

 

ゴールデンウィークで一度ゆっくり休む機会があるため体調が落ち着く人も多いのですが、いつもの生活が始まると、調子が悪くなっていく人がいるからです。

 

このように、1年間のなかで、疲れが溜まりやすい、体調を崩しやすい時期を理解しましょう。

 

ストレスの影響を受けやすいタイミングを知り、「今はムリをしないでおこう」「あと数日でひと息つけるから、少し頑張ろう」などコントロールするのが、適応障害を防ぐ手段のひとつです。

 

適応障害は、コロナ禍の生活にも影響しています。リモートワークが普及した今、自宅で仕事をしていると時間の区切りがなくなり、業務時間を過ぎても作業を続ける人が増えました。こうした生活スタイルによって不調を感じるようになった人は多くいます。

 

「デスクワークだと、座っているからあまり疲れないだろう」と思いがちですが、頭脳労働でも体力はしっかり削られます。特に女性は男性と比べて体力がないため、働き過ぎには要注意。

 

労働基準法では、月100時間を超える残業を認めていません。これ以上働くと健康に影響を及ぼすからです。

 

みなし残業をしてしまいがちな人は、残業時間が100時間を超えていないかチェックをしましょう。

 

もし超えているようであれば、上司や同僚に相談をして仕事の量を調整してください。それでも改善が難しく不調が治まらないのであれば、仕事を少し休む必要もあるでしょう。病院に行って医師に休職ができるよう診断書を書いてもらうのも手です。

 

PROFILE 益田裕介さん

精神科医。防衛医大卒業後、病院勤務を経て、早稲田メンタルクリニックを開業。YouTubeチャンネル「精神科医がこころの病気を解説するCh」にて精神医学に関する情報を発信している。

取材・文/廣瀬茉理