“4月病”と呼ばれる症状は「適応障害」という心の病気、と早稲田メンタルクリニックの院長・益田裕介さんは言います。そんな4月病になりやすいタイプや対策について聞きました。
疲れていても自炊にこだわるのは危険なサイン
4月に入ってから「なんだかうつっぽい」と感じる症状を「4月病」と言われますが、精神医学的には「適応障害」と診断されます。
新生活が始まる春は環境の変化が多い季節。そのため、新しい環境に慣れようとして心身が疲れて、気づかないうちにストレスを溜め込む可能性があります。適応障害はそのようなストレスが原因です。
適応障害になりやすい人は、変化によるストレスの影響を受けやすいタイプ。
新しい環境になじむのが苦手な人や極端に物事の白黒をつけたがる人、完璧主義な人、 周囲の様子に敏感な人、不安になりやすい人は注意したほうがよいでしょう。
また、完璧主義までいかなくても「こうすべき」と考えてしまうことが多い人も気をつけましょう。
例を挙げると、4月から部署異動をして新しい業務を覚えなくてはいけない。慣れない仕事に毎日ヘトヘトだけれども、「家のことは手を抜いてはいけない」と思い込んでしまっている。
しかし、なんでも理想通りにこなそうとするのは難しいもの。あれもこれもこなそうとすると、自分を追い詰めてしまいます。
夫と家事の役割分担を見直したり、近くに住む両親に手伝いに来てもらったり、ひとりで負担を抱え込まないようにすることが大切です。
頑張りすぎないで人に頼るのも大事
変化によるストレスの影響を受けやすい人は、適応障害にならないために“頑張りすぎない生活”を送れるよう工夫するとよいです。
仕事量が増えて困っているのであれば、溜め込む前に上司や同僚に相談を。
柔軟に考える訓練もおすすめです。まず自分の考え方の癖やこだわりを理解しましょう。
もし、やることが多くて忙しいときに「忙しくてもこうすべき」と考えてしまいそうになったら、ブレーキをかけます。そして、今置かれている状況をよく観察してみてください。
今の状況では何が一番優先すべきかを冷静に捉えます。そして、自分の考え方の癖やこだわりを捨てて、ムリをせずに目の前のことに対応するよう意識。
すると、思考の選択肢が広がり、「これでもいいんだ」と心に余裕を持てるようになります。
ふだんから体調をメモしておくと病院に行った際に役立つ
自分が適応障害かどうか知るには、ふだんの体調をメモしておきましょう。
適応障害の症状として、気分の落ち込みや不安、動悸、肩こり、腹痛、便秘、下痢、不眠、食欲の低下などが挙げられます。最近このような不調が多いと感じたら、精神科医に相談をしてこのメモを見せましょう。
女性であれば生理周期も書いておくとさらに役立ちます。適応障害ではなく、症状が似ているけれども女性ホルモンが原因で起こる病気「PMS(月経前症候群)」や「PMDD(月経前不快気分症)」と診断される可能性があります。
毎日の体調をメモしておくと、診察の際に医師が病気の手がかりを見つけやすくなるため、原因が分かりやすくなります。原因が判明すれば、的確なアドバイスや必要な薬が手に入るでしょう。
4月は子どもたちのストレスにも注意を払いましょう。変化に弱い子どもだと、新学期のスタートで負荷がかかり体調を崩すこともあります。
特にクラス替えのような環境の変化には注意が必要です。クラスの中でピリピリとした空気が流れ、いじめやケンカを起こしてしまう子もいます。
また、子どもは中長期的にものを考えることが苦手なので、この状態がずっと続くのではないかと不安に思っていることも。
新学期でとまどっている小学生なら、「クラスの中のピリピリとした雰囲気はすぐなくなるよ」「あと1~2か月もしたら変わるよ」と教えて安心させてあげましょう。
幼稚園や保育園に通う小さい子どもは、自分や周囲の変化により敏感でストレスを受けやすいケースが多いです。ストレスが溜まると、“お漏らしをする”、“だだをこねる”といった赤ちゃん返りをしてしまうこともあります。
親としては思うようにいかず、ついイライラしたり不安を感じたりしてしまいますよね。このようなときはフーッと深呼吸をして、冷静になるために立ち止まり、まずはその子のストレスを受け入れてあげましょう。
「なんでできないの?」「わがままを言わないで」といきなり怒るのではなく、「頑張ってやってみよう」「今はこうしようね」と優しく諭してあげてください。
PROFILE 益田裕介さん
取材・文/廣瀬茉理