「4月に始まった新生活の中で体の不調を感じる」のは、いわゆる“4月病”かもしれません。環境の変化でストレスが重なると体調を崩してしまうことがある、と早稲田メンタルクリニックの院長・益田裕介さんは言います。

4月になると体調を崩す人は要注意

気分の落ち込みや腹痛、不眠症状を感じるようになった人は要注意。このように環境が変わることが多い4月にメンタルの影響で起こる不調を、4月病と呼びます。

 

医学的に4月病は正式な病名ではありません。このような症状は「適応障害」と名づけられ、ストレスが溜まると発症しやすくなる病気です。

 

また、この時期は自分だけでなく、周囲の人々も忙しくてピリピリしがち。そのため、コミュニケーションをとる際、誤解やすれ違いが起こりやすくなり、余計に心の疲れを感じやすいのです。

 

適応障害になると、主に次のような症状が現れます。

四月病の症状例
益田先生への取材をもとに作成した適応障害で起こりうる症状の例
  • 気分が落ち込む
  • 落ち着かない
  • ヒステリーを起こしやすい
  • 不安に駆られる
  • やる気が出ない
  • 地面が揺れているようなめまいがする
  • 眠れない
  • 食欲が湧かない
  • 動悸がする
  • 便秘や下痢気味になる
  • 腹痛を感じる
  • 胃が痛い
  • 腰痛がする
  • 喉が詰まる感じがする
  • 肩こりがする


適応障害は気分の落ち込みや不安、不眠、食欲低下など「抑うつ状態」になることがありますが、「うつ病」とは異なります。

 

適応障害はストレスが原因であるため、その環境から離れることで改善します。一方で、うつ病は脳の遺伝子が原因で発症するので、環境を変えても治りにくいです。

 

ちなみに、GW明けに憂鬱な気分が続いて不調を感じる5月病も、4月病と同じ適応障害。つまり、4月病は5月病が前倒しでやってきたようなものです。

軽く考えないで!うつになる可能性もある

適応障害は放っておくと、心身ともにより深刻な状況に追い込まれてしまいます。

 

「気分の落ち込みが激しい」「死にたいと言うようになる」などのひどい抑うつ状態。過呼吸や冷や汗などの発作が起こるパニック障害。このような心の病を抱えてしまう場合も。

 

「周囲から休んだほうがいいと言われる」「急に涙が出てしまう」「食事や睡眠がとれていない」「(労働基準法で定められた)残業時間が100時間を超えている」という場合は、精神科のクリニックで医師に相談することをおすすめします。

 

精神科に行くことをハードルが高いように感じる方もいますが、医師に相談をすることで、自分を客観視して心の整理ができます。

 

また、自分では気づかない心のSOSを医師に汲み取ってもらい、休職の診断書を書いてもらうことも可能です。

 

疲れが溜まれば、どんな人でも不調は出るもの。「このくらいで甘えちゃいけない」とは考えず、ちょっとした不調でも困っているなら医師に相談をしましょう。


PROFILE 益田裕介さん

精神科医。防衛医大卒業後、病院勤務を経て、早稲田メンタルクリニックを開業。YouTubeチャンネル「精神科医がこころの病気を解説するCh」にて精神医学に関する情報を発信している。

取材・文/廣瀬茉理