常盤貴子さん

「よくこの仕事を受けたねと、言われることはあります」。そう語るのは女優・常盤貴子さん。20代の頃は連続ドラマの主演を務め、その後、舞台や朗読ほか、幅広く活躍されています。芸能生活31年目を迎えるなか「ずっと楽しく仕事ができた」とおっしゃる常盤さん。競争の激しいと言われる芸能界で、どんなことを軸に置き、今まで活動を続けてこられたのでしょうか──。

自分がどうしたいか

── 芸能界に入った当初、どういった方向性でお仕事をしていきたいといった思いはありましたか?

 

常盤さん:

特に「これがしたい」とか、「こうなりたい」といった目標はなかったかなぁ。

 

── たとえば、トップを目指したいとか、あの番組に出てみたいといった願望も?

 

常盤さん:

なかったと思う。そのときそのときで、楽しいと思えることをやってきたから。映画にはいつか出てみたいなぁとは思っていたけど、基本的にすべて出会いだと思ってたし。

 

そもそも、何をもってトップかわからないし、もともとあんまり人と比べないのかも。

 

それよりも、自分がどうしたいか。自分が何をしていると楽しいかっていうことでしかなくて。

 

何を面白いと感じるかって、自分にしかわからない感覚ですよね。他人には絶対分からないと思うんですよ。

 

だから、「よくこの仕事を引き受けたね」なんて笑われることもあるけど、私が面白いと思えばやりたいから、自分的には不思議でもなんでもないんですよね。それは、今も昔もずっと変わらないです

 

── 舞台も映画のお仕事もそうですか?

 

常盤さん:

たとえばよく「ドラマから映画や舞台にシフトチェンジされたんですか?」って聞かれることもあって。たぶん、以前に比べてテレビに出ていないから、そういった印象になってるんだと思いますが。

 

でも、これも自分が面白いと思えるものがあればいつでもやりたいと思ってます。 

朗読熱が熱いです!

常盤貴子さん
自分が面白いと思うものに着目する常盤さん。

 

── では、最近、常盤さんが面白いと思えるものは何かありますか?

 

常盤さん:

今は、朗読ですね。朗読熱が高まっています。

 

── 何かきっかけがあったんでしょうか?

 

常盤さん:

大林宣彦監督の遺作『キネマの玉手箱』の中で、広島の原爆で亡くなった「移動演劇さくら隊」の園井恵子さん役をやらせていただいたんです。

 

そのご縁から、目黒の羅漢寺で8月6日に毎年行われている「移動演劇桜隊・平和祈念会」の法要にも参加させていただきました。戦時下、国策としてのお芝居を続けるしかなかった演劇人たちは、移動演劇隊として各地に散らばりお芝居をしていました。原爆が落ち、芝居を続けたかったのに続けられなかった先輩方の無念を語り継ぐべく、「平和祈念会」の法要では朗読にも参加させていただいたんです。

 

── いかがでしたか?

 

常盤さん:

共演した若い俳優さんたちや、祈念会をずっと守ってくださっている先輩俳優の方々と戦争について勉強したり、話し合ったりできたことも、実りある時間でした。朗読を通して新しい世界がどんどん広がっていくことも、貴重な体験だった。

 

有難いことに、最近では他の場所でも朗読させていただく機会が何度かあって。

 

よく、自分がフォーカスすると、そこにいろいろ集まってくるってあるじゃないですか。その現象なのか、挑戦する機会を与えてもらえている今、自分にとって朗読はとてもワクワクする、学ぶべき「時」なんだと感じています。

 

── また違う景色が見えたような。

 

常盤さん:

そうですね。私は今までちゃんと朗読の勉強をしたことがなかったんです。なので、お芝居の先輩でもある平和祈念会の方に、「朗読の勉強をしたいんですけど、教えてくれますか?」って勇気を出してお願いしてみたんです。そしたら快く受けてくださって。

 

まだ2、3回しか集まれてないですが、朗読の勉強会のようなことをやっていただいています。

 

今は、自分のやりたいことと、やれることが重なってきていて、さらに面白い感じになってきてるなって思いますね。 

寝るためのフリだ!

── ところで、いつも元気で明るい印象がある常盤さんですが、元気の秘訣はなんでしょうか?

 

常盤さん:

なんだろう、寝ることですかね。何かあっても、寝ればなんとかなるって思ってるタイプかな。

 

化学的に本当かどうかは分からないですよ。でも、私は寝だめはできると思っていて。休みの日はずっと寝ています。

 

本当に忙しかったときは、「1週間分寝とかなきゃっ!」と思って、必死に寝ていた時もありました。20代の頃は、16時間ぐらい寝ていたような気もします。そこで寝ておかないと、1週間持たなかったし。

 

── 睡眠は大事ですよね。

 

常盤さん:

そもそも、寝るのが大好きなんです。朝起きた瞬間から寝たい!って思うし。

 

── 朝起きた瞬間からですか?

 

常盤さん:

そうそう(笑)。今日はどうやって寝ようかなって考えるとすごく幸せな気持ちになるんです。

 

もちろん、寒い日のロケでは「ツライ!」って思いますよ。でも、寝るときのことを考えるとハッピーになる。「この試練はきっと、心地よく寝るためのフリだ!」って。それならば自分の体が冷えていくことも厭わないぞ、と自分でも呆れるほどポジティブにもなれる。

 

── いかに、いい気分で寝れるか。

 

常盤さん:

温まってね。お風呂にちゃんと浸かって気持ちいい!っていう状態で寝たいですね。

 

── それは、最高な瞬間ですね!

 

常盤さん:

今日の夜も、寝るのが楽しみです(笑)。

 

PROFILE 常盤貴子さん

1972年生まれ。神奈川県出身。1991年に女優デビュー。『愛していると言ってくれ』、『Beautiful Life』(ともにTBS)ほか、多数の主演ドラマあり。映画や舞台、CM、ナレーションなど活動は多岐にわたる。

取材・文/松永怜 撮影/坂脇卓也
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