大人が抱えやすい対人関係の解決策について、臨床心理士の八木経弥さんにお話を伺いました。今回は、子どもの受験不合格を知らせるママ友からのLINEへ、どう返信したらいいかというお悩みにお答えします。
【Q】受験不合格を知らせるママ友からのLINEが…
娘が中学受験しました。塾で仲良しのお友だちと同じ学校を目指し、3年間頑張ってきました。ところが結果は娘だけ合格。オンラインでの合格発表の日、「うちの娘は残念ながら不合格でした。そちらはどうでした?」とママ友からLINEが。このママ友とは塾の送迎でよく立ち話していた仲です。どういう返事をすれば相手を傷つけず、残念だったねという気持ちが伝わりますか。また、こういう時に言ってはいけないNGワードはありますか?
相手を労い、共感する言葉を添える
これは難しい問題ですね。正解はありませんが、心理士の視点から考えてみたいと思います。
この場合、時間を置いて返事をなかなか返さないと、相手を傷つけることになりかねません。落ち込んでいるときはネガティブ思考になりがちなので、「うちだけ不合格だったからって気を遣っちゃってるのかな」「合格して気持ちが浮かれて返事して来ないのかな」と思わせてしまう可能性があります。
伝えづらいことではありますが、この場合、相手から合否をたずねてきてくれているので、「うちは合格しました」とまずは事実をすぐに伝えてあげる方が親切でしょう。
ただそのとき、返事の前後に「相手を労う言葉」を添えることが大切です。
「この○年間(○か月間)、子どもたちは支え合ってものすごく頑張ってきたよね」
「不合格だったこと、伝えにくかったと思うけど、教えてくれてありがとう」
「一緒に通えないのは本当につらいね。でもこれからも仲良してくれるとうれしいな」
などの「共感する気持ち」を添えましょう。
「あなたのことを私は考えているし、あなたが感じていることに対して私はこう思っています」という気持ちを伝えることが大事です。
また、「不合格という結果に触れる」のではなく、「不合格だった相手の気持ちを汲んで言葉を伝える」ことが大切です。そうすれば、相手を傷付ける可能性は低くなるはずです。
シンプルな言葉で端的に伝える
NGワードは、「相手を否定する言葉」です。
言う人はいないと思いますが「勉強がたりなかったのかな」などの言葉がけは相手の傷口に塩を塗るようなもの。つまり相手の立場に立ったとき、自分が言われたくない言葉はNGです。
今回のようなセンシティブな状況においては特に、その視点を思い出してほしいです。
また、「残念だったね」という気持ちを伝えたいということですが、これはなかなか難しいですね。
例えば「残念だったね」という表現は、もし自分の子が不合格だったときに、言われたいかどうか、正直、賛否両論あると思います。人によっては言われると傷つくという人もいます。コミュニケーションをしている二人の関係性で判断する必要がありそうです。
相手の気持ちを推し測り過ぎるのも良くありません。
例えば「つらいよね」という言葉。相手に「あなたに何が分かる?」と思わせるのではないかと、先を読み過ぎてしまう人は、その先の言葉を紡ぐことができなくなるパターンに陥りがちです。
それでは疲れてしまいますし、いつまで経っても返信ができず、既読スルーと誤解されてしまう可能性も。こちらが配慮して投げかけた言葉であれば、相手の反応を気にしすぎない方がいいでしょう。悩み過ぎるとますます返事に困ってしまいますから。
LINEだと絵文字でやさしさを伝えることができます。今回の相談では、距離感の近いママ友同士のやりとりですので、「不合格だったんだね」のあとに、ふざけていない涙マークを入れてはどうでしょうか。
また、下手に言葉をたくさん並べるより、シンプルな言葉で端的に伝えた方がいい場合も多いです。「うまい言葉が出てこなくてごめんね。私もどう返したらいいか分からなくなってしまって」という率直な言葉の方が、案外すっと気持ちが伝わるかもしれませんね。
PROFILE 八木経弥さん
取材・文/大楽眞衣子