夫婦仲はいいのに、親同士の仲がよくない。“お宮参りはうちが先!”、“ランドセルはうちが買う!”と、両家の親が競って子どものことに関わろうとする光景。両家の板挟みで、いらぬ苦労を強いられる女性の話が響きます。

学歴、職業…最初から両家の親同士は険悪ムード

結婚して10年、8歳と5歳のふたりの子どももいるのに、いまだに両家の親同士の仲がよくないため、「いらない苦労をしている」と話すカヨさん(42歳・仮名=以下同)。

 

夫は3歳年下の自営業。父親の会社を引き継ぎ、小さい会社ながら今は経営者です。結婚すると決めたときは、まだ父の会社の一社員でした。

 

「うちの親はそれが気に入らなかったみたい。『せっかく大学まで出したのに、どうして高卒の男と結婚するんだ』と父に嫌味を言われました。

 

彼は、家業に役立つ学ぶための専門学校に行き、国家資格ももっているんですけどね」

 

一方、夫の親は、カヨさんの父が有名企業に勤めているため「会社の名前をすぐに出す。自力で生きられないくせに」と思っているようです。

 

「立場も生き方も違うふたりの父親だから、相性が悪いんでしょうね。違う世界の人に興味を抱いたり、面白がったりできない意味では、ふたりに共通点があるんですが(笑)。

 

私は夫の家業に魅力を感じたし、私自身は会社員ですが、夫は私の仕事に興味をもってくれている。『従業員としてどう思う?』とよく相談してくれます。

 

経営者は従業員の心理を知りたいから、と。夫と私は相互補完しているのですが、両家の父親同士はそう思えないんでしょうね」

ランドセルにひな祭り、両家の親が競い合う

夫には妹がいますが、海外で仕事をしているので、ほとんど実家との接触がありません。子どももいません。一方、カヨさんはひとりっ子。

 

「父に言わせれば大事な娘を取られた、と。だったら完全につきあわなければいいのに、お互いに初孫で、ふたりきりの孫。だからうちの子たちが争点になるんです」

 

子どものおくるみはどちらが用意するのか、お宮参りはどちらが行くのか、七五三はどうする、ひな飾りは、ランドセルは誰が買うのか。

 

「そのたびに調整に走る私がいます(苦笑)。とはいえ私もフルタイムで働く身。面倒になると、どうしてもうちの親に、『今回は譲ってあげて』と言うしかない。

 

そうすると父も母も『いつもこっちが我慢ばかりだ』と言い出して。疲れますね。夫は『どっちも拒絶しちゃえばいいんじゃない?』とノーテンキなことを言うし」

 

お正月や夏休みも迷うことばかり。どちらも首都圏に実家があるので、どちらに先に行くかで毎年のように両親から探りが入るそうです。

 

そのたびにカヨさん夫婦はじゃんけんで決めていたそう。ただ、コロナ禍でどちらにも行けなくなり、かえってホッとしていたら、夫の両親から年が改まった瞬間、新年の挨拶でテレビ電話が入ったそう。

 

「うちの親は出遅れました。私たちにとってはどうでもいいことなんですが、両方とも妙なこだわりが強い人たちだから、はいはいと流すわけにもいかなくて」

子どもたちの考えを狭める価値観は植えつけたくない

子どもたちは、カヨさんの両親になついています。どちらに行ってもかわいがってはもらえるのですが、父方の祖父母は子どもたちにとっては「うるさすぎて面倒くさい」様子。

 

「特に義母が過干渉なんですよ。子どもたちが庭で遊ぼうとすると、『危ないからダメ』って。危険はほとんどないのに。

 

長女は活発で木登りするし虫も大好き。義母は、『女の子なんだから虫をとったりしないで!』と言うんです。私はそれが引っかかる。“女だから”とは言ってほしくない」

 

夫が一度、注意したものの、今さら義母世代の考えを変えられません。そのたびに娘には、「おばあちゃんはああいうけど、好きなことをしていいのよ」と言い聞かせているそう。

 

「子どもたちの自由を今から狭める言葉からは守ってあげたいから。結婚って、当人同士だけで完結できないのがつらいところですね」

 

両方の親が元気なことだけでありがたいのはわかっているんですけどねと、カヨさんは苦笑していました。

文/亀山早苗 イラスト/前山三都里 ※この連載はライターの亀山早苗さんがこれまで4000件に及ぶ取材を通じて知った、夫婦や家族などの事情やエピソードを元に執筆しています。